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喘息で死ぬ日本人は年1000人超。ここ10年減らぬ世界の喘息死事情

喘息(ぜんそく)が命に関わる病気であることを理解する人は多くいますが、実際、どれだけの死亡率なのか知る人は多くありません。様々な予防医療で対策する現在でも、ここ10年は減少していないのが現状です。今回のメルマガ『ドクター徳田安春の最新健康医学』では、完全に予防できていない喘息死に関して、現役医師の徳田先生が医学的観点から説明しています。

喘息で死ぬことがあります

喘息は死ぬことがある病気です。しかも、昨日まで全く元気だった若い人でも喘息の場合は死ぬことがあるのです。喘息死は窒息死です。人間にとって窒息はとても苦しい状態です。とても苦しい思いをして死んでしまうことがある喘息は恐ろしいのです。

しかも、喘息で死亡する人々の背景を調べてみると、喘息発作を繰り返していなかった中等症の喘息患者も時々みられています。自分の喘息はひどくないから、と言う認識では危険です。

統計によると、日本における喘息死は、1995年の約7000人をピークとしてそれ以降は減少しています。最近では年間1000人から2000人となっています。2000年代に厚労省は喘息死ゼロ作戦の活動を展開しました。その活動一定の効果を見たと思いますが、それでもまだ全国で1000人以上の人々が喘息で死んでいます

喘息による死亡を減らす予防医療

喘息による死亡者が減ってきた最大の理由は吸入ステロイドの導入です。喘息発作を予防するために1日1回から2回程度口から吸入するだけの簡単な治療です。これをきちんと継続して行うことが喘息死を予防する最も重要です。

吸入ステロイドの副作用は少ないです。ステロイド剤というと重い副作用を想像する人が多いと思いますが、それは長期間内服した場合のことです。ステロイド剤の吸入は、直接気道にステロイドを投与するものであり、副作用を最小限にするのです。中等症以上の喘息患者が、副作用を心配して、吸入ステロイドを行わないという選択は避けた方がよいと思います。

しかしながら、日本で喘息死がゼロになっていないのは、喘息患者さんが吸入ステロイドの予防療法を継続して行われていないからだと考えられます。吸入ステロイドを徹底して行うためには、一般の人々の喘息に対する理解と医療機関の喘息診療の質の向上が必須です。

喘息は気道の慢性炎症です。毎日の管理が大切なのです。喘息の患者さんは、定期的に通院し、喘息日記による日々の管理を徹底しましょう。ピークフローメーターという、筒のような簡単なツールで、喘息による気管支の状態を客観的に測定することができます。

最近10年間は減っていない世界の喘息死

喘息死が1990年代前半に増加した理由の1つに、ベータ刺激薬という、吸入気管支拡張薬の過剰使用が挙げられています。このタイプの気管支拡張薬の吸入を続けているとだんだんと気管支拡張作用が弱くなり効きにくくなります。そして徐々に気道の閉塞が進み、逆に窒息をきたしてしまうリスクが高くなるのです。

最近発表された研究結果から、若い人に限ってみると、世界的な喘息死の減少傾向がここ10年はプラトーになっているとの警告が発せられました。34歳までの若い人について喘息死を調べたその研究によると、1993年から2006年までに、約60%も喘息による死亡が減りました。しかしながらそれ以降はほとんど減っていないのです。

世界での1990年代後半から2000年代前半までの喘息死の減少をもたらしたのは、やはり吸入ステロイドの世界的な普及でした。しかしながら、2000年代後半にプラトーになった理由は、この吸入ステロイド剤の普及の限界と考えられます。

そこにはいくつかのバリアがあります。患者の健康や病気に対する認識が最大のバリアです。ヘルスリテラシーという概念があります。健康管理のために必要な知識を取り入れて実行する能力です。喘息の患者さんで、中等症以上であれば吸入ステロイドの毎日の使用を行うためにはその理解と実行力をつなぐリテラシーが必要です。

また、喘息の増悪因子としては喫煙があります。軽症でもすべての喘息患者では禁煙を実行すべきです。受動喫煙を避ける行動も必要になります。また、大気汚染も気道に悪影響を及ぼします。喘息患者には、大気汚染のひどいエリアに行くことを避ける必要もあります。

ヘルスリテラシーを向上させるには子供の頃からの教育が大切です。学校教育に喘息についての学習を導入するとよいでしょう。また、メディア等での教育番組でも、喘息についての知識を啓蒙する内容をぜひ取り入れて欲しいものです。喘息の知識の一般的な普及を進めていくために、私もこのメルマガで喘息を今後も定期的に取り上げ続けたいと思います。

文献 Ebmeier, SJ, Thayabaran, D, Braithwaite, I, B?namara, C, Weatherall, M, and Beasley, R. Trends in international asthma mortality rates. (published online Aug 7.)Lancet. 2017; http://dx.doi.org/10.1016/S0140-6736(17)31448-4

image by: Shutterstock

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