耳が幸せ太りである。花澤香菜×AK100IIを3つの視点でクロスレビュー

2015.08.28
by 横田吉木
 

そして次に、オーディオ誌などで活躍し、月に10本以上のイヤホン、ヘッドホンレビューをしているライターさんに、音についてレビューしてもらいました。

オーディオライターの眼:「ボーカル、楽器のみならず空気まで引き出すプレイヤー」

なぜか音質だけを聞けと、このハイレゾプレイヤーを急に渡された。本当に何の曲かもよくわからないまま、とにかく素直に聞くことにする。

渡された曲は、バイオリン、チェロ、ピアノというピアノ三重奏にボーカルが加わる構成。

まず、最初はピアノソロから始まる。SNの高さが尋常ではない。ピアノの繊細な音の立ち上がり、とくに右手の高域のタッチ、鍵盤の高音から降りてくる手の動きが見えるようだ。

そしてこのモデルの性能が顕著に現れるのが、バイオリンの最初の入り方。弓が弦に触れて、弦を引き始める、その瞬間の微小な音から徐々に音量が上がっていく抑揚を如実にとらえている。解像感は今ままでに聞いたプレイヤーとヘッドホンの組み合わせでは最高峰だろう。

そしてボーカルが登場。いきなりフォーカスがピタリと合った形で脳内定位する。ボーカルが直接、頭の中に入り込むイメージだ。ボーカルがブレスする瞬間の息を吸い込む微細な音、日本語のサ行の摩擦音の抜ける声、まるで口の形が見えくるようなリアルな音像を作りあげる

バイオリンとボーカルの主旋律が重なる時があるが、ボーカルのほんの少しかすれた声とバイオリンの弦と弓がこすれる音が、分離感を維持したままで溶け合う。CDなどで聞いてしまうと、ボーカルと弦楽器の分離はここまでは保てない。ボーカルもバイオリンもひとつの楽器として、存在感を保っている。やはりこれは、このハイレゾプレイヤーのもつSNの高さと解像度の高さの現れだと思う。

また、チェロの中低域の膨らみ方がジャストサイズだ。チェロのような低音は、膨らみすぎてぼやけたり、または背景に溶け込んでしまったりするケースもあるのだが、チェロのサイズ感のまま音像をリアルに再現する。ヘッドホンの力も大きいのだろうが、フォーカスのあった低音の解像感の高さには感動した

曲の最後、ピアノのみ空間に余韻として残るのだが、フットペダルを踏んでいるのだなというのが感じられる。この余韻の消え方、臨場感の高さまで聞けるのはなかなか貴重な経験だ。

総じて、ボーカルの個性はもちろんのこと、楽器のもつ音の個性、演奏者の個性、それらを最大限に引出してくれるプレイヤーといえよう。

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