夫が意識不明に。心が折れそうな女性へ、石田衣良がアドバイス

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毎回読者からの質問に真摯に回答するQ&Aコーナーが人気の『石田衣良ブックトーク「小説家と過ごす日曜日」』。今回は、夫が脳出血で意識不明になり、次々と告げられる合併症や医師からの厳しい言葉に何度も心が折れそうになっている状況をどう過ごせばよいか悩む女性からの質問です。さて、石田さんの答えは…?

夫が1カ月以上も意識不明に。心が折れそうです、どうすれば?

Question

shitumon夫が脳出血で倒れ、1ヶ月以上経った今も意識のない状態が続いています。その間、合併症等でひどい状況に陥りました……。次々と告げられる厳しい言葉に、何度も心が折れそうになり、今いる世界の中でおぼれそうになります。でも、「私がしっかりしなくては」と何とか気持ちを立て直す、そんな日々を繰り返しています。石田さん、どんな状況にあっても心を折らず、自分の心とうまく折り合いをつけて過ごす術をアドバイスいただけますでしょうか。

石田衣良さんの回答

これは切ないですね。ぼくも25歳くらいのとき、母親がクモ膜下出血で倒れてしまって、一週間くらい看病していた時期があったんですよ。完全に脳死状態になって、脳の中央の部分、呼吸筋などを制御している大事な部分に触ってしまうおそれがあったので、手術は危険すぎてできない状態でした。だから、そのまま待つしかなかったんです。

「どうなるかは分からないので家族を全員集めてください」と言われて。ぼくの妹はそのころイギリスに留学していたんですけれど、家族をみんな呼び寄せて、1週間くらい朝から晩までついていましたね。大変だったなあ。あなたはもう1カ月も看病が続いているんですよね。たぶんご主人も50歳台だと思うんだけど、体が若くて元気があるから、これから先、いつまで看病が続くか分からないんですよね。

ただ、ひとつ言えるのは、あなたはすごく強いですよね。今の段階でもう十分にやっています。でも、そういうまじめな人に限って、さらに自分にもっと上のこと、もっと完璧な看病をする妻の役割を期待してしまうと思うので。そこまでがんばる必要はないというのははっきり言っておきたいですね。

今も彼は意識不明のままかもしれませんけど、病人の立場からすると、そばにいてくれるというだけで十分なんですよ。ぼくも看病中は、母親の足をさすって、「あんなことがあったね」「こんなことがあったね」とひたすら話しかけていました。交代で夜も泊まり込みしましたね。そういうことを考えると、今あなたのやっていることで十分彼は報われているし、感謝していると思いますよ。折れそうになったら折れてもいいし、泣きたいときは泣いてもいい。なんとか今のこの状況で諦めずにステイしてほしいですね。

「がんばる」というのも違うんだよなぁ。ただそこにいてあげてほしいって感じかな。そばについていてあげるのがいちばんの看病なので。そこができればもう十分に立派だと思います。

 

source: 石田衣良ブックトーク「小説家と過ごす日曜日」
image by:Shutterstock

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続きは8月28日発行のブックトーク第004号で……

 

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著者:石田衣良
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