よく言う「人間の脳は10%しか使われていない」これって本当?

2017.10.18
by gyouza(まぐまぐ編集部)
脳みそ 能力
 

私たちの脳は、「生命活動を支える」、「気持ちのコントロールをする」、「誰かとコミュニケーションをとる」など、日常生活に欠かせない役割を担っています。

今回は、脳の機能や情報伝達の方法、脳の使用量についてお話します。

脳の役割

頭蓋骨に守られている脳。

その重さは約1400g程度です。

心臓を動かし、息をするなど大切な生命活動を支えてくれているのが脳であり、私たちが生きていくためには必要不可欠な器官です。

また、感動したり、決心したり、行動することができるのも、すべて脳のおかげです。

私たちは脳があるからこそ、さまざまな経験から学び、言葉を話し、また、抽象的なことを考えることができるのです。

脳を構成する「神経細胞」と「グリア細胞」

脳を構成するのは「神経細胞」と「グリア細胞」です。

神経細胞

神経細胞は、電気信号を発することによって、細胞間で情報のやりとりを行っています。

この神経細胞の数は、大脳と小脳を含めた脳全体で千数百億個あります。

神経細胞からは、長い「軸索(じくさく)」と、枝のように分岐している短い「樹状突起(じゅじょうとっき)」が伸びています。

これらの突起が別の神経細胞とつながりあって、「神経回路」と呼ばれるネットワークを作っています。

神経細胞は、軸索と樹状突起を含め、ひとつの単位として「ニューロン(神経単位)」と呼ばれています。

グリア細胞

神経細胞とともに脳を構成しているのが「グリア細胞」です。

ヒトの場合、神経細胞の10倍ものグリア細胞が存在しています。

この細胞は、神経細胞を支え、神経細胞に栄養を供給することで、神経細胞の働きをサポートしています。

神経細胞間での情報伝達はどのようにしておこなわれている?

神経細胞から伸びている軸索の末端には、こぶ状に膨らんだ「シナプス」があります。

シナプスはその先の神経細胞と密着しておらず、数万分の1mmほどの隙間があいています。

この隙間は、「シナプス間隙(かんげき)」と呼ばれています。

神経細胞は、軸索を伝わってきた電気信号を「神経伝達物質」という化学物質に変えて、その先の神経細胞に情報を伝達しています。

これまでに見つかっている神経伝達物質は「ノルアドレナリン」「ドーパミン」「アセチルコリン」などで、数十種類あります。

人間は脳の10%しか使っていないというのはホント?

「脳は10%しか使われていない」という話がありますが、そもそもこれはどこからきた話なのでしょうか?

「脳の使用率が10%」という話には、次の3つの説が存在します。

(1)アインシュタインによる説

アインシュタインが「人間は潜在能力の10%しか引き出せていない」という言葉を発した、とする話があります。

これは、ウィリアム・ヘルマンスの著書『アインシュタイン、神を語る』の記載に由来するもので、この著書がもとになって、「脳は10%しか使われていない」という神話が生まれたとされています。

しかし、あくまでも著書に記載があるだけであって、実際にアインシュタイン本人が言葉にしたという根拠はないといわれています。

(2)「グリア細胞」説

グリア細胞は脳のおよそ90%を占めています。

先に述べたように、グリア細胞は神経細胞をサポートする働きがありますが、情報伝達する際の電気信号には必要がないと考えられていました。

このことから、「人間の脳は10%しか使われていない」という話が出てきたといわれています。

(3)「サイレントエリア」説

19世紀には、動物の脳を使ってさまざまな研究が行われていました。

研究の結果、脳を刺激しても変化が起こらない部分や、役割が判明しない部分があることがわかりました。

この部分は「サイレントエリア」と呼ばれ、このことから脳は10%しか使われていないと認識されるようになったといわれています。

それでは、実際に脳はどのくらい使われているのでしょうか?

脳はどのくらい使われているの?

これまで、ヒトの脳はそれぞれの機能を司る領域に分けられていて、ひとつの情報を処理する際にはその機能を司る領域のみが使われていると考えられてきました。

しかし、アメリカのマサチューセッツ工科大学のピカワー学習・記憶研究所は、科学雑誌『サイエンス』の中で「脳の各領域は共同して情報交換を行いながら処理をしている」ことを発表しました。

つまり、それまで一般的に言われていた「脳はそれぞれの機能を司る領域に分けられていて、ひとつの情報を処理する際にはその機能を司る領域のみが使われている」という説は間違っていることが証明されたのです。

ピカワー学習・記憶研究所が行った研究では、“点の色や動きを認識する”という作業を行う中で、脳の6つの領域の神経がどのように活動するかを調べました。

その結果、ある特定の機能を司っている領域のみではなく、すべての領域において同時に神経活動が行われていることがわかりました。

その中には、色よりも動きを多く処理する領域もあれば、動きよりも色を多く処理する領域があることも明らかにされました。

このことから、脳はある特定の領域のみがフルに活動しているのではなく、機能ごとでメインとなる領域を変えながら、全体的に使っているということが判明し、「脳は10%しか使われていない」という説は覆されたのです。

しかし、実際に脳のどのくらいの割合が使われているのか、あるいは、脳は100%を使われているのか、ということは明らかになっていないのが現状です。

今後の脳科学の研究に期待したいところですね。

執筆:藤尾 薫子(保健師・看護師)
医療監修:株式会社とらうべ

 

<執筆者プロフィール>
藤尾 薫子(ふじお かおるこ)
保健師・看護師。株式会社 とらうべ 社員。産業保健(働く人の健康管理)のベテラン

<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供

image by: Shutterstock

 

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記事提供:Mocosuku(もこすく)

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