マルサは大企業には入らない
マルサというと、巨額な脱税を暴く正義の味方というように見られることも多いものです。
そして、「マルサにはタブーはない」と言われることもあります。マルサは、どんな有力企業であろうが、政治家に関係する企業であろうが、憶せずに踏み込んでいく、と。
だからこそ、正義の味方的な扱いをされ、映画やドラマにもたびたび登場するのです。
しかし、この「マルサの正義の味方説」は本当なのでしょうか?
答えは、まったく違うのです。
マルサには、タブーが多々あり、むしろマルサが踏み込める領域というのは、非常に限られています。
このことは、税務行政の最大の汚点であり、闇だともいえます。
たとえば、あまり知られていませんが、マルサというのは、大企業には絶対に入れないのです。信じがたいことかもしれませんが、資本金1億円以上の大企業に、マルサが入ったことはほとんどないのです。
つまり、マルサは、大企業には踏み込めないのです。
こんなにわかりやすい「意気地なし」はないでしょう。
マルサにタブーがない、ということなど、まったくの都市伝説なのです。
なぜマルサは大企業に行かないのでしょうか?
もちろん、国税庁はその理由を用意しています。理由もなく、大企業に入らないのであれば、誰が見てもおかしいからです。
その理由とはこうです。
通常、マルサは1億円以上の追徴課税が見込まれ、また課税回避の手口が悪質だったような場合に、入ることになっている。
しかし、大企業の場合、利益が数十億あることもあり、1億の追徴課税といっても、利益に対する割合は低くなる。つまり、大企業では1億円程度の脱税では、それほど重い(悪質)ではないということである。つまり、中小企業の1億円の脱税と大企業の1億円の脱税は、重さが違う。
また大企業には、プロの会計士、税理士などが多数ついており、経理上の誤りなどはあまりない、そして大企業の脱税は海外取引に絡むものが多く、裁判になったとき証拠集めが難しい。
これを聞いて、そんなのおかしいだろう!と思ったのは私だけではないはずです。
確かに、中小企業の1億円と大企業の1億円では、利益に対する大きさが違います。大企業の場合、1億円の脱税をしていても、それは利益の数百分の一、数千分の一に過ぎないので、それで査察が入るのはおかしい、というのは、わからないでもありません。
が、それならば、大企業の場合は、マルサが入る基準を引き上げればいいだけの話です。利益の10%以上の脱税額があれば、マルサが入る、というような基準にすればいいだけです。
また「大企業の脱税は海外に絡むものが多く、証拠を集めにくい」という理由も言語道断です。
こういう理屈が成り立つならば、海外絡みの脱税をすれば、マルサに捕まらない、ということになります。つまり、よりずる賢く脱税をすれば、マルサは手の出しようがないということです。