東レ子会社の不正で明るみになった「トクサイ」という闇の商習慣

 

まず、THCは「お客様」への「お詫び」を何度も何度も口にしていますが、それは全て納入先のことです。ちなみに、東レの一子会社であるTHCのホームページだけでなく、巨大企業である親会社の東レのホームページでも「詳しくはここへ」というリンクを貼って、この「プレスリリース」に飛ばしているだけです。

私は別に「世間様」が全能の権力を持つことには賛成しませんが、少なくともタイヤの品質に関して懸念を与えたということについては、エンドユーザー全体にも及んでいるのですから、もっと違う言い方ができるのではないかと思います。とにかく、素材の問題で、エンドユーザー向けの責任はタイヤメーカーの問題であり自分たちは関係ないという意識、その上で東レ本体としては、100%子会社であるにも関わらず子会社だから関係ないという意識が透けて見えます。これは企業の社会的責任を示す態度として、不十分と思います。

そもそも安全性に関係がないという主張ですが、金属製品と違って、タイヤというのは基本的に消耗品です。ですから、エンドユーザーにしてみれば、初期性能は問題がなくても、品質が微妙に低い製品というのは耐久性能として微妙に問題があるのではないかと思います。つまり、早めに交換しなくてはならないのであれば、コスト増になるということです。

タイヤメーカーとしては、偽装したコードを使用した製品は「B級品」として安く売っているのではないわけですから「実害はない」のでしょうが、エンドユーザーに関してはどうなのか、懸念を感じます。いやいや、タイヤは外皮の合成ゴムが先に磨耗するから問題ないという反論も来そうですが、仮に骨格に当たるコードが微妙に弱ければ、表皮の劣化も早まるのではないかと思うのです。「そうではない」と胸を張るのであれば、データが開示されなくては納得はできません

更に言えば、神戸製鋼のデータ偽装品を使用した新幹線車両に関して、例えばJR東海が「安全に問題はない」とハッキリ言っているわけですが、新幹線運行について世界一のノウハウを持っているJR東海が断言した以上は、乗客である我々は、それを信じて乗ることはできるわけです。偽装した金属製品がまだ交換されていないようだから、乗るのに保険をかけようとか、切符を安くせよなどという主張や心配をする必要はありません。

ですが、タイヤを履いた自家用車に関しては、安全に留意して車両の点検を行いその車両を運転するのはエンドユーザーであるわけです。そのエンドユーザーに対して、タイヤメーカーは「安全だが曖昧さをなくしたい」と言っているわけですが、東レの側としてどう考えているのかが全く伝わって来ません。

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