突然の「エルサレム首都」発言でトランプは誰を試したかったのか

2017.12.11
 

トランプ大統領は12月6日、ホワイトハウスで行った会見で「エルサレムをイスラエルの首都と公式に認定する時期が来た」と表明しました。現在テルアビブにある米国大使館を、聖地エルサレムに移転するとも公言し、この「エルサレム首都認定」発言は世界中で大きな波紋を呼んでいます。このトランプ発言の真意は何か、なぜトランプ氏はあからさまなイスラエル支持を続けるのか、パレスチナ問題を20年近くに渡って取材し続けてきたジャーナリスト・藤原亮司さんが発言の裏側を読み解きます。

トランプ大統領の「エルサレム首都発言」が世界中で波紋を呼んだ理由

今こそエルサレムをイスラエルの首都として正式に認めるときだと決断した。

12月6日、記者会見でトランプ米大統領はそう述べた。それに伴い、テルアビブにある米国大使館をエルサレムに移転させるべく指示を出した、という。自らが選挙活動の際に口にした「公約」を、いま実現させようとしているとアピールしてみせた。

イスラエルの中心都市、エルサレムは、城壁に囲まれた旧市街の中に、ユダヤ教キリスト教イスラム教の聖地を持つ。第一次世界大戦以降、イギリスの委任統治下にあったパレスチナは、イスラエル建国に伴う国連パレスチナ分割決議(1947年)により、国連管理下に置かれるとされた。しかし、1948年5月のイスラエル建国とともに起きた第一次中東戦争でイスラエルが西エルサレムを占領。さらに1967年の第三次中東戦争では、ヨルダンの管轄下にあり、旧市街の聖地がある東エルサレムを占領。イスラエルは建国以来主張し続けてきた「首都・エルサレムを事実上手に入れた

しかし、国際社会はイスラエルの主張を認めず、ほとんどの国は最大の商業都市であるテルアビブに大使館を置いてきた。

今年5月のユダヤ教聖地「嘆きの壁」訪問、10月のユネスコ脱退にも見られたように、トランプ氏のイスラエルあるいはユダヤ系アメリカ人への支持は手厚い。イスラエルによるパレスチナ自治区への入植についても、強い懸念を表していたオバマ前大統領とは異なる。実際、イスラエルはトランプ氏の大統領就任後には入植地建設を加速させる動きを見せているが、それについても容認するかのような発言さえ行っている

これら一連の手厚さを考えると、いま自らの汚職疑惑で揺れるイスラエルのネタニヤフ首相を救済するために、この時期にイスラエル最大の悲願である「首都認定」「大使館移転」をぶち上げたのではないか、と勘ぐってしまいたくなる。

ではなぜトランプ氏は、あからさまにイスラエル支持を続けるのか。

print
いま読まれてます

  • この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け