65歳を境に「遺族厚生年金」が急激に減ってしまう理由

 

ちょっと事例を出します。

1.昭和27年12月10日生まれの女性(今は65歳)。

何年生まれ→何歳かを瞬時に判断する方法(参考記事)

昭和36年4月1日以降昭和61年3月31日以前の20歳以上でサラリーマンや公務員の配偶者だった人は国民年金保険料納める必要は無かった。つまり国民年金に加入してもしなくても構わない任意加入。この女性は20歳になる昭和47年12月からきちんと国民年金保険料を納めていた。昭和57年にサラリーマンの夫と婚姻して専業主婦となり、国民年金保険料を納める義務は無かったが、任意加入して将来の年金を増やすために納め続けた。昭和61年4月からは強制加入となり、サラリーマンや公務員の扶養に入ってる配偶者は第3号被保険者となって、国民年金保険料納めなくても納めたものとなった。

国民年金保険料払わなくても保険料支払ったものとして年金もらえる第3号被保険者は優遇されてるのか?(まぐまぐニュース参考記事)

妻は、国民年金に加入する20歳到達月から国民年金保険料納付義務が終わる60歳到達月の前月までの480ヶ月の期間の内、450ヶ月の国民年金保険料納付済み期間有りとなった(仮に450ヶ月にしてます)。老齢厚生年金も微額ですが年額5万円貰えるとします。

途中、夫が記事冒頭のア~エまでのどれかに該当して亡くなり妻自身は65歳になるまで、遺族厚生年金90万円+中高齢寡婦加算584,500円=1,484,500円(月額123,708円)を受けていた。65歳になったから妻は450ヶ月分の老齢基礎年金が貰える。しかし、中高齢寡婦加算584,500円は消える。年金額はどうなるのか…。

まず、遺族厚生年金85万円(←妻自身に老齢厚生年金5万円あるからその分引かれて90万円から85万円になった)。そして、老齢基礎年金779,300円÷480ヶ月×450ヶ月=730,594円。老齢厚生年金は年額5万円。更に、この妻は昭和31年4月1日以前に生まれている人なので経過的寡婦加算が遺族厚生年金に加算。平成29年度経過的寡婦加算額はこの妻の生年月日だと年額77,955円。

経過的寡婦加算額(日本年金機構) ※このリンクの表の一番右側

よって、65歳からの年金総額は(遺族厚生年金85万円+経過的寡婦加算77,955円)+老齢厚生年金5万円+老齢基礎年金730,594円=1,708,549円(月額142,379円)。経過的寡婦加算というのは本来は、中高齢寡婦加算584,500円より老齢基礎年金が低くなる場合の差額を補うものですが、中高齢寡婦加算よりも老齢基礎年金が高くなる人にも経過的寡婦加算は支給されるわけですね。

というわけで、65歳以降は中高齢寡婦加算はなくなっちゃうけど、自分自身の老齢基礎年金が貰えるようになる歳でもあるから全体の年金総額で見たらそんなに変わらないか、逆に上がったりするわけですね。とはいえ、逆に妻自身が国民年金保険料を未納や免除期間が多かったりすれば、年金総額は下がる事はもちろんあります(笑)。こういう場合がね…年金総額下がっちゃうから言いにくい^^;。

※追記

中高齢寡婦加算や経過的寡婦加算は、文字どおり寡婦(遺族年金で言えば、夫と死別した女性にしか支給されません

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佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
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