「昆虫の減少の程度と根本的な原因」というテーマで27年という長い歳月をかけて行われた研究の結果、ドイツの自然保護地区で羽を持つ昆虫が76%も減少していることが判明し、同国民に大きな衝撃を与えています。今回、無料メルマガ『出たっきり邦人【欧州編】』の執筆者のひとりでドイツ在住の日本人著者・KOKOLIさんが詳しく解説するとともに、「共存」の難しさについても持論を展開しています。
にわとこ通信 ~共存の道~
オランダのラドバウド大学のカスパー・ハルマン氏を筆頭に、ドイツ人やイギリス人から構成される専門分野チームの研究の結果が10月中旬にドイツ国内の様々なメディアで、大々的なニュースになりました。それはドイツ人にとって非常にショッキングな内容でした。
ドイツ国内のノルトライン・ヴェストファーレン州、ラインランド・プファルツ州、ブランデンブルク州の自然保護地区の計63箇所に昆虫を捕まえる装置を設置し、1989年以降ボランティアで集まった昆虫学者たちによって収集されたデータを集計し、27年間という長い期間で昆虫界にどのような変化があったかという研究結果の発表でした。
それによると、羽を持ち飛行出来るタイプの昆虫が27年の間に平均76%も大幅に減少したということです。
この数字に驚愕しませんか?
76%もの莫大な量の飛行する昆虫がいなくなったのです。逆に言うと今は27年前の24%しか飛行する昆虫がいないということです。しかもよりによってドイツの手厚い「自然保護地区」内で!
この事実は広範囲に渡る問題である、と専門家達は警告を鳴らし、この昆虫の大幅減少の原因の一つは農業で肥料として使用されている窒素化合物である可能性がある、とも指摘しています。
確か植物の70%以上は受粉を昆虫に依存していると言いますからその受粉が減少するということに繋がるのでしょうし、昆虫がいなくなるという事は、その自然環境も変化する事実に直結します。
以前、大量の蜂が女王蜂などを残したまま突然消えた、または沢山の蜂が死んだと、こちらで話題になったことがあります。専門家達の研究によって、ネオニコチノイド系農薬が蜜蜂たちを駆除しているという結果に行き着きました。その後ドイツはこの事態を深刻に捉え、何種類かのネオニコチノイド系農薬使用が禁止されました。
我欲に効果と効率のみを追求し、その結果邪魔者を排除するとか、他の生物が共存出来ない物質を使用するとか、この現象は人間が自然界にしているだけでなく、人間が人間にしていることでもあります。ここ数ヶ月間、テロ云々どころか国家レベルでも物騒なニュースが多く、戦争などの最悪な流れにならなければ良いが、との声も知人たちから漏れました。
私は、それら人間社会の軋轢と、昆虫界に及ぼしている負の影響のニュースを突き詰めてゆくと、根底に同じ問題が横たわっていることを感じており、また言葉にすると非常に陳腐ですが、今更ながら「共存」が、解決策の鍵の一つになっていると思うのです。しかしこの「共存の道」を歩むも簡単なことではありません。
毎年、年末になるとその一年を振り返り、来年の抱負などをつらつらと考えますが、来年の抱負の一つに「共存」というテーマを盛り込むことにしました。
各個人が共存出来なければ、集団ではもっと共存出来ませんでしょうから、まず私個人レベルで、日常のあらゆるシーンで「共に生きるにはどうしたら良いのかな?」から思考と行動を起こすと、私自身とその身辺で何か変化するか、観察してみようと今思っています。
また幸か不幸か、私は異文化・異人種の環境に身を置いています為「共存」は必須テーマと改めて自覚したところです。
著者/KOKOLI(「にわとこ通信」連載。ドイツ・ミュンヘン在住)
パリかロンドンを目指したハズが気付けばドイツに15年くらいは居着いています。かつて、仕事が変わり港町ハンブルクよりアルプスの麓ミュンヘンへ引っ越して来ました。今やミュンヘンは人生で一番長く住んでいる街になり、すっかり私の第二の故郷となっています。…とは言え、ミュンヘンの話題に限らず、国境を超えて様々なことを書きますよん。
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