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宗教は関係ない。日本人が現地で見たロヒンギャ問題の「真実」

古くからミャンマー国内で生活しながらミャンマーの国籍を認められず、バングラディシュからの不法移民として差別される「ロヒンジャ(ロヒンギャ)」の人々。その背景には、仏教を信仰するミャンマー国内でイスラム教を信仰するロヒンギャの人々への宗教的な対立が背景にあると言われていますが、メルマガ『房広治の「Nothing to lose! 失う物は何も無い。」』では、今回の問題の元々の発端には「宗教問題など無かった」と断言。現地の人達から直接聞いたという「真実」を明かしています。

ロヒンジャ問題

ロヒンジャ問題は、どこの国にも存在する問題が一つ、そして、もう一つは、少女に対する婦女暴行・殺人、それに対する家族の報復、そのまた報復から始まった。

2012年8月、少女への暴行・殺人のニュースで流れた時、私はミャンマーにいた。痛ましいニュースであった。そして、少女の家族が殺人犯に対して報復をしたというニュースが流れた。それが、だんだんエスカレートして、ついに、軍が鎮圧に動いたというニュースに発展した。

2週間ぐらいの短い期間にエスカレートし、軍が村民のほとんどをそれぞれが安全な地域まで、隔離したと聞いていた。

事件から間もなく、国連の調査隊・隊長が、ヤンゴンで、イスラム系住民と仏教徒の宗教問題だと世界に向けて、発信してしまった。これには、ミャンマー人がビックリしていた。被害者の少女への婦女暴行・殺人の家族友人と加害者の家族友人の報復事件だったというのが、一言も報告されなかったのだ。

当時、ロヒンジャがいるラカイン地域に行くには、政府の許可が必要だった。私はミャンマー人の友人に頼み、許可をとって、一緒に視察に行った。村全体がもぬけの殻になっており、兵士が数百メートルおきに立っていた。一部の家屋は焼けたようなあとがあり、これが、村の住民をそれぞれ離れた場所に強制移住させたということなのかと理解した。

事件の後に、これは、宗教対立なのか、少女の殺人とその報復合戦なのか、村人に聞いてみると、村人は宗教対立などないというのだ。

それからしばらくして、ミャンマー人が恐れていた通り、ミャンマーの外からイスラム系の活動家が、本件にかかわるようになり、そしてこの国連の干渉により、本当に宗教戦争になってしまった。こうなると100年たっても解決できない問題になってしまったのだ。

この段階では、アウンサンスーチーは、まだ政権をとってなかった。

そして、ロヒンジャの人権が守られるべきだとの発言を一度した。この発言が、ミャンマー国民の反感を買い、彼女の人気が一時的に急落した。

この「事件」の後、彼女は、本件に関してはコメントを控えている

政権をとった今、事態はより複雑になってしまった。

ミャンマーの民主化は、日本の民主化とかなりちがう。限定的なのだ。選挙により、アウンサンスーチーの党、NLDが政権をとったことにはなっているが、軍と警察、入管に関しては、NLDの統制下にないのだ。選挙で変えられるのは、軍関係以外のことだけ。文民統制ではないのだ。

軍は、また、次の選挙でNLDの邪魔をしたいと思っていると推測される。

そして、軍の蛮行は、国際的にはアウンサンスーチーの責任にされることを、軍は楽しんでいる、好都合だと思っている節まである。

このような複雑な理由から、この問題は解決できない。

ちなみに似た問題は、アメリカでもあるのだ。トランプ大統領が問題としているメキシコの不法移民の子供たちとロヒンジャの問題の根源は同じなのである。彼らにも国籍はなく(ロヒンジャにも国籍が無い)、オバマ大統領は、移民の子供たちには、罪がないので、アメリカ国籍が無くても、アメリカに居住する法律を作った。トランプ氏は、オバマ大統領の功績を、全て、なかったことにしようとしており、この移民の子供たちへの居住権も奪う方向なのである。ロヒンジャの人権は問題にし、メキシコからの不法移民の子供たちの人権は無いとするのは、矛盾である。

image by: Hafiz Johari / Shutter stock

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【著者】 房広治 【月額】 ¥880/月(税込) 【発行周期】 不定期 発行予定

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