最近ネット上で「フランスのパリは治安が最悪になった、各国の移民のホームレスが大量に増加している」と、不安を煽るような情報が流れました。はたして、現在のパリは本当にそこまで治安が悪化しているのでしょうか? 無料メルマガ『出たっきり邦人【欧州編】』の執筆者のひとりでフランス・パリ在住の日本人「ぼんじゅーる☆愛」さんが、今現在のパリの街の様子について在住者ならではの視点で箇条書きにまとめてくれました。
パリ時々晴れ時々単身赴任。日本人が、パリの現在がどんな感じか箇条書きで書いてみる
さて今回は、ネット上に出回っていた以下の記事を受けて、私の思う実際のところのパリを箇条書きでまとめてみたいと思います。
● 外国人「パリの現在がどんな感じか住んでみた経験を書いてみる」
【2017年度版】パリの地区別危険度が一目で分かる治安マップを公開。治安の良い・悪いエリアを知りパリ旅行のホテル選びや旅行プラン作りの参考にしてください。 | 坂男 https://t.co/xePLnIiXnq #坂男
— ari_neutron (@aariUmts) 2017年9月14日
異文化を理解することと、それを受け入れることは、別の問題なのである。
パリ市内の路上で公然と行われるムスリムの定時礼拝 pic.twitter.com/R0J0txfUAi
— テラスぽんた (@joyponta) 2016年9月26日
- 街の綺麗さはふた通り。建築や街並みは美しいと思う。古い建築の一階に現代的なデザインのお店になったりすると、美しくない、と思うことも。清潔さでは、ポイ捨て普通だし、汚しても道路掃除の人がいるので、特に気にしてない人が多いのでは。
- 電子タバコ(アイコスなど)がかなり浸透しているので、タバコ臭い思いをすることが少ない。
- 治安は、日本の方がいいと思う。スリやアンケートを装った物盗りなどがたくさんあるが、気をつけて生活するのが習慣になっている。私物を置いて席を取れるのは日本だから。
- パリに痴漢はいない。もし向こうが本気なら性的暴行・殺人までいっていると思う。
- もしくは、ある程度の手順を踏んで、交際としてちゃんと誘う。女性も断れる。
- 駅にいるホームレスの人や物乞い・アルコール中毒風の人は、白人の人がほとんど。何人かまでは聞いていないからわからない。国籍もルーツも様々だろうと思う。ただ黒人のホームレスは、パリ市内で私は数人しか見たことがない。
- ちなみにスリも、道端の物乞いも「ビジネス」が多い。23時ごろに車で帰っていくのを見たことがあります。元締めがいると思う。
- ざっくりいうと、治安の悪い地域は家賃が安いから、移民が多い。私たちも移民です。アフリカ系、東欧系、中東系、アジア系、で棲み分けがある程度ある。
- 見慣れないことがある、という驚きはあるが、ほんと人によるから、見た目や人種では判断できない。たとえば、ATMの前で物乞いしていたら怖いけど強奪などをされたことはまだない。
- 外国人だから狙われるわけではなくて、隙があるから狙われる。子供のスリも普通にいるから、それが当然と思って育った人たちもいるということ。
- 日本人好きなのは、一部の人。日本の漫画やゲームは人気だけど、子供が好きなもの、ちょっと変わってる、文化の一つとして知るべきだから知っている、という感じで、「日本好き!」という人は、そこまで多くはない。日本と中国と韓国は全部一緒みたいな人もいる。
- アラブアフリカ中東アジアなど、各国料理が手軽に食べられる。別に仏人もそれを利用しているようだから、特にその国の人向けという感じはしない。中華料理屋さんで中国人がいっぱいだったら、絶対に美味しいんだろうな!と思って入ります。
- 武装した警官がメトロや、人通りの多いところにチームでいるので初めは驚いた。テロが欧州各国で続く今では、なんとなく安心に思えたりする。
- デモがあるときや、人出が多いと予想されるときは、最寄りのメトロの駅が使えなくて、不便なこともある。多くの場合、数時間で終わる。車の放火炎上は見たことある友人はいますが、私は過去二年ではまだないです。
ざっとまとめて書きましたが、日本では私は大阪に住んでいて、他の都市に住んだことがありません。また、ほかの国にパリほど長く住んだこともありませんので、見方に偏りがあると思います。
何度か引っ越ししてきた私は、郊外もパリ中心部も住んだことがあり、各国人の大家さんにお世話になってきましたが、最初に紹介した記事のようなことは私はあまり見たことがありません。
しかし、フランスがあらゆる階級社会だということは言えます。貴族の家系だとすごい!とか、この学校にいるからお金持ち!とか。でも、貴族の名前も買えたりしますし(笑)、貧乏でも好かれる子は好かれる。
みんなそれぞれそれなりに幸せそうに見えます。
日本みたいに他と比べないで、自分のことをすごくよく見ている。それが着こなしに現れたり、逆に自分のことしか考えてないと言われたり、それぞれの部分をそれぞれ好きなように捉えるんだと思います。
でも、怖い思いをする人がいるのも事実だし、先入観もある。そういう先入観をなくそうっていうポスターも授業で習いました。先入観ってみんなわかってるけど、危険を避けたいから見た目で判断する。だから差別になる。
仏人と全く同じ権利にならないと差別されてるというなら、私たちはずっと差別されてる側だと思います。でもそれって、日本でもそうじゃないかな。
よくわからないものや嫌なことって、だれしもナチュラルに避けていると思う、みんな同じってなりようがない。こういう風に私が言えるのは、私が通ってた学校や住んでた地域が特別変わってるということではないからだと思います。
でも、怖い思いしたことある人もいるし、私みたいに何もない人もいるっていうのも事実だと思います(スリには一度だけ遭いました)。
日本だって私は嫌だな美しくないなって思うことは複数あるので、フランスが嫌なら帰るしかないんですが、私はまだ勉強したいし、まだパリにいたいです。
ただ、ファッションの世界では、パリ以外の都市ももちろん大いに魅力的なので、行くとなれば、やぶさかではありません。
ちなみに私の学校は、バルベスという駅で犯罪多発地域と言われています。授業で遅くなったりすると、人通りの多いところを選んで帰りますが、怖い目にあったことはまだないです。でも犯罪多発地域だから、自己防衛はしています。別に怖くないと言ってるわけじゃなくて、ある程度怖いです。日本ではそういうことってあんまり感じないかもしれないですね。
できるだけ自己防衛もしなくちゃいけないっていうのは、日本で薄着だから痴漢に遭うんだって言われるくらい理不尽だと思うけど、何かあったら取り返しつかないかもしれないから用心してる、ということだと思います。
「9.」で書いたみたいに、「見慣れないことがある、という驚きはある」のですが、じゃあそれが嫌に繋がるかというとそうではない。
私は肌の色も国籍も違う友人たちがいるけど、人柄がいいなって思っているから付き合ってるのであって、見た目や人種は判断材料にならない。普段の行動を見てて、素敵だな、いいなと思うから、ずっと仲良くしてたいな、って思います。
著者/ぼんじゅーる☆愛(『パリときどき晴れときどき単身赴任』連載。フランス・パリ在住)
日本人と結婚した日本人妻がパリで単身学生生活を送る、面白探訪日記。パリの中心から、ファッション・旅行・食事・好きなスポットについて語ります!
image by: Frederic Legrand – COMEO / Shutterstock.com