実はこの手の被害は社会問題化していた
私は借家派であったので、長いこと賃貸マンションなどで暮らしてきた。家賃の支払いに関して言えば、月末の振込日を失念していたり、インフルエンザで身動き取れず、少し遅れてしまったことはある。その際はオーナーに直接電話をしたり、不動産屋に連絡をして、しばらく待ってもらった。
持ちつ持たれつ誠意を持って対応していれば、保証会社の出番などないはずだ。
賃貸保証会社発足に尽力した人物に話を聞くと、高齢化社会により、身寄りのない人物は保証人をつけられないという問題の解消などニーズはあったし、回収不能率は極めて低いから儲かるビジネスモデルが出来上がったのだということであった。
不動産オーナーを長くやっていれば、出ていかない賃借人や問題行動をする者、家賃滞納を繰り返す者による被害は何らか受けていることも多く、その場合の回収は大変だから、保証する会社が好条件を提示すれば、客はつくと考えたそうだ。
しかも保証業務は、金融業にも当たらないし、不動産業にも当たらない。だから、届出る必要もなければ、規制する法律もないわけだ。
また、賃貸保証会社は本来保証を受ける賃借人がお客筋なのではなく、不動産オーナー側賃貸人が主なお客であり、不動産管理会社が客なのだ。なぜなら、「この物件は賃貸保証会社必須です」と、不動産オーナーもしくは不動産管理会社に条件をつけてもらえばいいのだ。
不動産を借りるのだから、相応の初期費用は誰もが覚悟しているから、家賃の20~30%程度、保証料で上乗せされてもケチをつける確率は低い。嫌なら借りられないだけなのだ。
Aさんのようにすでに保証人を立てていても、オーナーの意向で賃貸保証会社と保証契約をするケースも多いであろう。
ただ、やはり歪なのだ。保証契約をしているのは、賃借人であるのに、保護されるのは不動産オーナー、搾取される側は常に賃借人であり、保証人をどうするか選ぶ選択権すらない。
人生何かのトラブルはあろう。入院するかもしれないし、事故にあうかもしれない。Aさんのように、一方的な難癖で払っていないことにされることだってある。その際に、滅茶苦茶な取立てに遭うなどあってはならないことだ。
国土交通省が動き出す
家賃債務保証業者登録制度がやっと2017年10月に始まった。ただ、未だにその規制は無いに等しい。まだ登録は任意であり、業者に対しては登録にあたり、暴力団ではないことや契約時の書面交付、財産の管理についてなど当たり障りのない条件に留まっている。
消費者トラブルが多く、規制に動いてもまだ、試しにやってみよう程度のものだ。
また、国土交通省によれば、この家賃債務保証業者の定義は、「賃貸住宅の賃借人の委託を受けて当該賃借人の家賃の支払いに係る債務を保証することを業として行うこと」となっており、物件により保証会社必須でないと借りられないというような現在通常に横行している不動産賃貸の実態とはかけ離れているものだ。
まずは、保証人を指定するのであれば、保証料はそもそもの保護を受ける不動産オーナーが支払うべきだろう。そうした根本的な規制をしなければ、突然不当な取立てを受ける被害者は後を絶たない。
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