金正恩の訪中をテレビで知った安倍首相の失態と底が見えた外交力

 

2.条件付き? 段階的?

朝中首脳会談の結果を伝える3月29日付「読売新聞」1面トップの見出しは「北、非核化に条件/『同時並行』要求」である。「同時並行」とは、金正恩が習近平との会談で「韓国と米国が善意をもって我々の努力に応じ、平和実現のために『段階的で同時並行的な措置』を取るならば、非核化問題は解決に至ることが可能となる」と述べたことを指している。

この読売の見出しそれ自体に、北が非核化に何らかの「条件」を付けたり、さらには韓米に対して「同時並行」の対応措置を求めるなど、おこがましいことだ──裏返せば、国際社会に敵対する核武装というとんでもない犯罪行為をしているのは北なのだから、四の五の言わずに核を放棄すればいいのだという主張が見え隠れしている。

非核化を「北朝鮮の非核化」と誤解するところから出発すれば、このように北に対して一方的な屈服を強いるかの論調になってしまうのは必然である。しかし非核化は米朝韓の相互作用であるという正しい理解に立つならば、お互いに条件を出し合って段階的に積み上げて行く、複雑極まりないプロセスなしには達成されないことなど、自明のことではないか。

例えば、上述の91年「南北基本合意書」の第2章「南北不可侵」の中の第12条には、

南と北は不可侵の履行と保障のために、この合意書の発効後3か月以内に南北軍事共同委員会を構成・運営する。南北軍事共同委員会では、大規模な部隊移動と軍事演習の通報および統制の問題、非武装地帯の平和的利用の問題、軍人同士の交流および情報交換の問題、大量殺傷兵器と攻撃能力の除去をはじめとする段階的な軍縮の実行問題、検証問題など、軍事的な信頼醸成と軍縮を実現するための問題を協議・推進する。

と規定され、また第13条では

南と北は偶発的な武力衝突とその拡大を防止するため、双方の軍事当局者のあいだに直通電話を設置・運営する。

ことも謳われている。

このような、朝米韓がそれぞれに条件を出し合って、踏み石を1つ1つ確かめるように踏み出して行く、ガラス細工を組み上げるようなプロセスがなければ「非核化」など始まりようもないのである。条件や段階がない方がいいかに言う読売論調は余りにガサツである。

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