没落するMicrosoft、「失われた10年」の原因は何だったのか?

 

では、なぜ Netdocsプロジェクトは失敗に終わってしまったのでしょうか?

私は、実際の会社の中では、クリステンセンが『イノベーションのジレンマ』で書いていた理由以上の強い力が働いていると思います。その力とは、大きく分けると

  • 市場で成功している製品とそれがもたらす利益を、社内の敵からも守ろうという力
  • 目に見える形の成果を求める力
  • 自分たちが得意なこと、自分たちだけにしか出来ないことをやろうとする力
  • 社内政治

の4つになります。

一番目のものは、とても分かりやすいのですが、Microsoftにとって「Windows OS向けに作られた Officeアプリケーション」は、OSビジネスとアプリケーションビジネスの両方においてとても重要だったのです。なので、Netdocs をブラウザ上で動かすことは、アプリケーションビジネスにとって脅威なだけでなく、OSビジネスにとっても脅威だったのです。

経営陣が、「Netdocsは ActiveXを使うべき」と指示を出したのは、OSビジネスを守るためだったし、最後には Microsoft Officeと競合してはいけないとまで言ってしまったのです。

二番目のものは、新規事業が市場規模や市場が立ち上がるスピードの面で魅力的に見えず、どうしても積極的な投資が出来なくなってしまうというジレンマです。

小さなベンチャー企業にとっては、自分たちが作ったアプリケーションを数万人が使ってくれて広告収入が入るだけでも大きな成果です。しかし、Microsoftのような大きな企業にとって、その手の新規事業がもたらす売り上げや利益はあまりにも小さく積極的な投資が出来ないのです。

Netdocsの場合、数人のエンジニアを抱えた小さなプロジェクトのままで経営陣の目に止まらない形で進めている分には良かったのですが、莫大な予算が着いた途端に変な方向に向かってしまったのは、当然と言えば当然なのです。

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