北朝鮮「核放棄」の見返りに、日本はいくらカネを搾り取られるか?

 

更にその背景としては、北朝鮮の冷涼な国土という問題があります。朝鮮半島というのは、北には鉱物資源や豊かな水量ゆえの水力によるエネルギーなどの資源があるものの、国土が冷涼なために、農業ということでは非常に貧しいわけです。ですから食糧の自給はできません

ですが、90年代以降は冷戦が終結して、十分な援助を自動的に受けられる状況ではなくなりました。そこから再三にわたる核危機の繰り返しが始まるわけです。正に繰り返しになるわけですが、だからと言って北朝鮮という国は、そのカルチャー自身の中に、核兵器を持って世界と喧嘩をしたいという「主義」を隠し持っているわけではありません。

そうではなくて、経済的に食糧自給ができない一方で、政権が国際社会に対して「頭を下げている」姿勢を見せれば政権のメンツが保てない、そこで、反対に国際社会を脅し、国際社会を翻弄して見せて、政権としては威信を保ちつつ最後にはカネを出させるというストーリーを描いて、そのようなシナリオのドラマを繰り返してきたわけです。

そんなバカなことはやめて、コツコツ地道に稼げばいいではないかという考え方もあります。例えば、中国の胡錦濤前主席は、晩年の金正日に対して、「改革開放をやって経済成長を目指せ」ということを真剣に説得していたという説があります。ですが、北朝鮮はその政策は採用しませんでした。と言いますか、そうした政策は選択できないのです。

というのは、中国のように「経済活動は自由にするが、政権批判は禁じて社会体制は維持する」という手品のような手法は北朝鮮には使えない、金正日はそう考えたからです。経済を自由にすれば、必ず世界から自由に情報が入ってくる、そうすれば体制は崩壊するだろうという危機感から自由になれなかったのでした。

韓国との間では、経済特区を設けて韓国資本に投資させての工業団地を展開したわけですが、例えば開城工業地区におけるプロジェクトは喧嘩別れになっています。表面的には、韓国が「ミサイルに資金が流れる」懸念から消極的になり、これを受けて「メンツを潰された」格好となった北が韓国企業を追放したという格好になっています。

この開城のケースですが、潰れたことの直接的な理由はともかく、やはり北朝鮮の中に大規模に自由経済を導入することには北の体制というのは非常に臆病であるということが推測されます。

ですから、自分たちで自由な経済の中でコツコツ稼ぐこともできないわけで、だからこそ、何らかの形で国際社会からカネを引き出す、その際に「物乞いをしている」ようなメンツの潰れた姿勢ではなく、その正反対の「核兵器」による脅迫という「彼らなりにメンツの立つ方法を繰り返してきたのです。

そう考えると、今回の危機の出口においても、カネの問題は避けて通ることはできません。といいますか、北朝鮮サイドからすれば、国際社会からカネを引き出すというのが本筋であり、そのために核開発などという面倒な芝居を続けてきたということもできるからです。

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