ここに大きな問題があります。
北朝鮮が「それなりに民生を安定させ」ると同時に「アングラ経済への関与を止め」るようにさせる、しかも「政権の国民に対するメンツ」が立つ二様にする、そのための「カネ」が一体どの程度になるのかは簡単には算出できません。
そうではあるのですが、中国は「鴨緑江の安定」の代償として何らかのカネは出すでしょう。また、桁は違うでしょうが、ロシアも出すのではないかと思います。また、韓国は経済力に限りがありますが、一種の当事者として出せるだけの金は出すでしょうし、政治的にも出せる状況です。トランプも、ディールの一部として出すでしょう。
問題は日本です。北朝鮮は、日本に対して「韓国の朴正煕政権が60年代に受け取ったカネ」と同じような「植民地化への謝罪・賠償ニュアンスのカネ」は、当然受け取れるものと思っていると思います。また、今回の「危機の処理のカネ」としても、支払能力のある日本からは「取れるだけ取れ」という思いはあるでしょう。
だからこそ、現時点では短距離ミサイルの廃棄などは言っていないし、拉致被害者に関しても冷淡な発言を続けています。どちらも、日本向けのカードとして切るつもりなのでしょう。
では、日本は払えるのでしょうか?
世論としては非常に抵抗があると思います。ですから、例えば、ポスト安倍として野党とまでは行かなくても、自民党内で比較的リベラルな政権が成立したとして、「核危機の出口」の一環として大金を出すということになれば、大きな反対が起きるのではないかと思います。
一つの考え方としては、北朝鮮に対する強硬イメージを政治的に維持してきた安倍政権なら「どうしても国際社会との協調」をする中で「カネを出さねばならない」という場合に、他の政権とは違って比較的「出せる」のではということが指摘できます。
原籍が左で国際協調の政治家が、国際協調のために多額の金を出そうとすれば、自国優先という右の世論の反発で動きが取れなくなる一方で、原籍が右の、例えば安倍政権が国際強調を狙ってカネを出す場合は、比較的抵抗が少ないというわけです。
勿論、法外な額を吹っかけられた場合は毅然として拒否するという選択もあるのでしょうが、その場合も、国際的孤立というような罠にハメられないために、事前に問題を察知して落とし所へ持っていく戦略性は必要でしょう。
いずれにしても、この核危機の「本当の本筋」はカネの話であり、今週の南北会談のあたりから、その本筋がジワジワと見えてくるのではないかと思われます。