「言葉と行動が別々ではいけない」習近平の言葉に滲む米国への強い不信感

July,5,,2017,-,Berlin:,Chinese,President,Xi,Jinping,At
 

4月26日、アメリカのブリンケン国務長官が訪問先の中国で習近平国家主席と会談。メディアはこぞって、習氏の「ライバルでなくパートナーであるべき」との言葉を引いて報じました。今回のメルマガ『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』で、多くの中国関連書を執筆している拓殖大学の富坂聰教授は、習氏の言葉にはバイデン政権への強い不信感が滲んでいると解説。習政権の不満がはっきりと表れていると、王毅外相の発言を伝えています。

同床異夢の米中 何が健全な競争なのか共通語を持てないことのリスク

習氏「ライバルでなくパートナーであるべきだ」ブリンケン氏と会談(『毎日新聞』)

中国を訪問中のアントニー・ブリンケン米国務長官は26日、北京の人民大会堂で中国の習近平国家主席と会談した。これを報じた日本のメディアの多くは冒頭の習近平の言葉を引用した。これに対してブリンケンは、〈「対面での外交に勝るものはない。誤解や誤算を避けるために、互いの相違点がどこにあるのかを明確にする必要がある」と指摘〉したという。

さて米中はこの会談を通じて、一定の安心感を共有できたのだろうか。はっきりいって不透明だ。少なくとも中国側は疑心に満ちていたというべきだろう。

新華社の報道によれば習近平はまず「今年が中米国交正常化から45周年」だということに触れた後に、「中米関係は45年間の風雨を経て、多くの重要な示唆を得た」と以下のように語っている。

「両国はライバルではなくパートナーであるべきだ。互いに傷つけ合うのではなく、協力して目的を達成すべきだ。悪性の競争を避け、小異を残して大同につくべきで、信頼に足る言葉と、実を結ぶ行動が必要だ。言葉と行動が別々ではいけない。私が提起した相互尊重、平和共存、協力・ウィンウィンの3つの大原則は、過去の経験の総括であり、未来への導きだ」

言外にはバイデン政権の「言行不一致」に対する強い不信感がにじんでいる。

習近平政権が抱えるバイデン政権に対する不満については、この会談に先立って行われた王毅外相との会談でより顕著に表れている。王毅は、「昨年11月、習近平国家主席とバイデン大統領がサンフランシスコで会談し、『サンフランシスコ・ビジョン』を共に打ち出した。両国首脳が指導する中、中米関係は全般的に悪化が食い止められて落ち着き、各分野で対話、協力、肯定的側面が増え、両国民と国際社会はこれを歓迎している」と評価する一方で、こう釘を刺した。

「中米関係の否定的要因が依然として増え、積み重なり、様々な妨害や阻害に直面し、中国の正当な発展の権利が不当に抑圧され、中国の核心的利益への挑戦が続いている」

実際、ブリンケンの訪中が決まって以降、この訪問の目的は「バイデン政権が習近平政権にどんな注文を付けるのか」に焦点が当てられてきた。

先に引用した『毎日新聞』の記事にも、〈(アメリカは)中国がロシアの防衛産業を支援していると見ており、軍事転用が可能な半導体などのロシアへの輸出をやめるよう王氏に求めた。台湾では5月20日に中国が独立派とみなす民進党の頼清徳新政権が発足する。ブリンケン氏は中国が挑発的な行動を取らないよう促したほか、南シナ海での領有権争いで中国がフィリピンに威圧的な行動を続けている問題でも自制を要求した〉という。

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