参考文献一覧が巻末にある。50件超で、なかなか怪しげなのもあって楽しい。29の偽書の説明はコンパクトで、ちょっと物足りないがタイトルを知っただけでも収穫があった。筆者は音楽の専門家らしく、ショスタコーヴィチの証言、ショパンのラブレター、クライスラーの名曲という3編はとくに面白く読めた。偽書には何ともいえない魔力がある。しかし直球でアホな偽書もあるのだ。
朝日新聞といえば、従軍慰安婦をめぐる報道や、福島第一原発事故での吉田調書など、記者が大ウソを検証しなかったり、記者の解釈が恣意的だったりで大いに問題であったが、でっちあげや捏造とまではいえない。しかし、半世紀前には完璧な捏造記事を掲載していた。有名な「伊藤律架空会見事件」である。
日本共産党の指導者の一人、伊藤律が当局の目を逃れて潜伏していた時期に、朝日新聞神戸支局の記者が山中で接触し、単独インタビューに成功したというふれこみで、センセーショナルな記事が掲載された。伊藤の表情が臨場感を持って描かれ、記者との一問一答まで紹介されていた。朝日新聞は3日後に謝罪社告を出し、記者は退社、支局長は依願退社、大阪本社編集局長は解任された。
これが昭和(戦後)の三大誤報の一つになり、「サンゴ汚したK・Yってだれだ」の珊瑚礁記事捏造事件で、朝日新聞は平成の三大誤報の一つという栄冠も得た。昨年からはモリカケで偽書まがいな報道をし、いまは対話で朝鮮半島の非核化が生まれるとか無責任なことを書く。生き残りたいなら、真実の報道をすることだ。都合が悪いと言論で立ち向かわずに即裁判、ヘタレな朝日だ。
編集長 柴田忠男
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