南北首脳会談の成功を認めぬ、読売新聞「非核化」のカン違い

 

今年中に「終戦」宣言というスピード感

板門店宣言が、3の(3) で「南と北は、休戦協定締結65年となる今年、終戦を宣言し、休戦協定を平和協定に転換し、恒久的で強固な平和体制を構築するため、南北米3者、または南北米中4者会談の開催を積極的に推進していくことにした」と言っていることが、この宣言の核心部分である。

朝鮮戦争が、1953年7月27日の休戦協定によって取り敢えず「撃ち方止め」状態を確保したにも関わらず、以来65年間にも渡って、それを恒久的な平和協定に置き換えるという当初予定が実現しないまま、南北中米は今なお国際法上の交戦国”の立場におかれている。ここに朝鮮半島の慢性的な危機の根源がある。

朝鮮戦争の主要な当事者は、南、北、南を支援した米、北を支援した中の4者であるが、休戦協定締結当時南の李承晩政権はあくまで戦争継続による「北進統一を主張して同協定に応ぜず、そのため北中米の3カ国が休戦協定の署名国となった。しかし中国はその後、1992年に韓国と国交を樹立したことで南との敵対関係を清算した。そのため、休戦協定を平和協定に置き換えるための交渉当事者は、形式的には北と米の2カ国のみであるが、実効的には南を加えた3者でなければ意味がなく、しかしそれを確実なものにしていくには中国の参画も必須である。そこのところを、宣言は「3者または4者」と言っている。

どういう形にせよ、中国はもちろん米国も必ずこれに乗ってくるという確信があるので、南北は「今年、終戦を宣言する」と言い切ったのだろう。朝米会談の後、早ければ今年7月27日の休戦協定締結日南北米中の宣言」が行われる可能性がある。

こういう流れに対して、上述『読売社説は、「警戒必要な平和協定』」という小見出しを立てて、こう言っている。

  • 気がかりなのは、宣言が、休戦状態にある朝鮮戦争の終結と平和協定への転換に言及していることだ。南北と米国の3者、または中国を加えた4者による会談を積極的に推進するとしている。
  • 核問題解決のメドがつかないうちから、北朝鮮の体制保証につながる平和協定に踏み込むのは、順序が逆ではないか。

だからトランプ大統領は慎重に対処すべきだというのだが、これは見当が違っている平和協定を結ぶことによって、米の核を含む全土壊滅もしくは体制壊滅などの攻撃に晒される恐怖から解放されたいというのが北の一貫した戦略目標であり、平和協定締結によってそれが達成されるのであれば、そもそも北が核開発をしなければならない理由そのものが消滅する。だから南北も世界もこの板門店宣言を歓迎しているのだが、読売は平和協定が結ばれること自体を警戒している。

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※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2018年4月30日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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