ビットコインに否定的なビル・ゲイツ、根底には「もっと馬鹿理論」

 

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モナコインで莫大なプロセッサパワーをつかった重大な攻撃

暗号通貨は、マイナー採掘者たちによる多数決を使うことにより安全性を担保しています。理論上は、他のマイナーたちを上回る計算能力を一気に投入することが出来れば、不正を働くことが可能ですが、実質的には無理とされて来ました。実際、誕生して10年経つビットコインではその手の不正はまだ一度も発生していません

今回、この正面からの攻撃がモナコインで成功してしまった理由に関しては、今後丁寧な解説が出ると思いますが、具体的な手口に関しては「モナコインへの攻撃について(BLOCK WITHHOLDING ATTACK)」や「モナコイン(MONA)、PoWアルゴリズムの弱点をつかれマイナーに攻撃される…経緯・今後の課題まとめ」に分かりやすく解説してあります。

ひとことで言えば、意図的にブロックチェーンの分岐を起こすことにより、自分が取引所に対して(現金の対価として)モナコインを渡したことをなかったこと」にしてしまうことにより、取引所から1,000万円の現金を盗んでしまったのです。

1つ確実に言えることは、マイナーの数が少ない暗号通貨(アルトコイン)は、ビットコインのようなメジャーな暗号通貨と比べると、攻撃が容易、ということです。

ビットコインの採掘には、世界中で大量のコンピュータが使われており、それを上回るコンピュータを一瞬でも用意するのは実質的に不可能です。しかし、モナコインのようなマイナーな(こちらは採掘者という意味ではなく、メジャーの反対という意味)暗号通貨の場合、採掘者の数がそれほど多くないので、瞬間風速的にそれを上まわる計算能力を持つことはビットコインよりは遥かに容易です。

採掘に使われるコンピュータは流用が可能なので(厳密にはGPUとASICの違いはありますが)、普段はビットコインやイサリウムを採掘している一群のコンピュータを、一時的に(ライバルの少ない)アルトコインの採掘に振り分けて、今回のような不正を働くことは、コスト面から考えてもそれほど困難ではありません

さらに、モナコインは(ビットコインよりも)取引スピードが早いことを特徴としていますが(平均90秒)、それが災いした面も否定できないと思います。ビットコインがわざわざ取引スピードを10分という長さにしている理由を考えれば、モナコインは安全性を若干犠牲にして取引スピードを早めていた、だから攻撃された、と批判する人も出ると思います。

ICOが乱立する中で、この手のアルトコインが攻撃の対象になりやすいという認識が広まれば、もう少し人々も冷静になることが出来るのでは、と期待しています。

 

※ 本記事は有料メルマガ『週刊 Life is beautiful』2018年5月22日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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