金正恩よ、これがディールだ。微笑むトランプが突きつけた無慈悲

 

ここまでの話、もちろん「必ずうまくいく」という話ではありません。ただ、トランプと金が、「北は完全な非核化をし、アメリカは体制保証する」と合意したことで、話が次に進んでいるのです。そして、金が約束したので、彼がウソをついているか検証できます。

A君が、Bさんに「結婚しよう!」といった。その後A君は、「やっぱりやめた」といった。Bさんは、A君に、「あなたはウソをついた!」と主張できます。しかし、A君はBさんに、「結婚しよう!」とはいっていない。デートはしたけど、「結婚しよう」とはいっていない。Bさんは、A君に「あなたはウソをついた!」と主張できません。A君は驚いて、「そもそもなんも約束してねえし」と開き直ることでしょう。

今回の話も同じです。トランプと金は、「北は非核化しアメリカは体制保証する」と約束した。これは、「結婚しよう」と約束したのと同じです。その後は何をしますか? 「日取りどうする?」となるでしょう。

米朝首脳会談に「成果なし」という人は、「A君は、『完全に結婚する!』とはいったが、『完全かつ検証可能で不可逆的な結婚』をするとはいってない!」「A君は、『完全に結婚する!』と約束したが、『結婚式の日取り』を明らかにしなかった!」と批判しているのと同じです。その前に、そもそも「私たちは結婚します」という約束を交わすのが大事でしょう? それが決まれば、「では日取りを」となります。

さて、金正恩は、非核化に応じるのでしょうか? まだわかりません。わかりませんが、少なくとも彼が「ウソつきかどうか」を検証する基準は設定されました。「非核化しても成功」「北が非核化を拒否しても成功」です。

北は、94年と05年の成功、つまり「非核化の約束をし、制裁を解除させ、経済支援を受け取り、でも核兵器は保有しつづける」でいきたかった(94年には、まだ核兵器はなかったが)。しかし、用心深い安倍総理やボルトンさんのアドバイスのおかげで、金は追いつめられてきているのです。

 

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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