ドイツに大声で激怒するトランプが「最大最強の味方」を失う日

 

ガスパイプラインをめぐる対立

そして、トランプさんは、もう一つドイツに憤っています

トランプ大統領は、ロシアからドイツに天然ガスを供給するパイプライン計画「ノルド・ストリーム2(Nord Stream II)」に言及し、「ドイツはロシアによる捕らわれの身となっている。膨大なエネルギーをロシアから得ているからだ」と発言。続けて「世界中の誰もが、このことについて話している。われわれがドイツを守るために数十億ドルも払っているというのに、ドイツは数十億ドルをロシアに支払っていると」「ドイツはロシアに完全に支配されている」と語った。
(AFP=時事 7月11日)

ドイツはロシアに完全に支配されている」そうです。何の話でしょうか? 「ノルド・ストリーム2」とは? 少し、補足しておきましょう。

欧州が、ロシアのガスに依存していることは、よく知られた事実です(総輸入量の約4割、総消費量の約3割)。ところで、ロシアのガスは、どういうルートで欧州まで届くのでしょうか? 主なルートは、「ウクライナ経由」のパイプラインでした。

ところが、ウクライナで04年革命が起こり、親欧米・反ロシアのユーシェンコさんが大統領になった。その後、ロシアとウクライナは、しばしばガス料金問題で対立。「ロシアが、ウクライナへのガス供給を止めた!」というニュースを覚えている人も多いでしょう。

ロシアは、「反ロのウクライナを迂回して、直接欧州にガスを届ける方法はないか?」と模索しはじめた。そしてできたのが、ロシアとドイツを直接結ぶ海底パイプラインノルド・ストリーム」です(2011年稼働)。

「これはいい!」ということで、ロシア、ドイツ、フランスは「ノルド・ストリーム2をつくろう!」ということになった。そして、2019年完成にむけて、プロジェクトが進んでいるのです。

もう一度、AFP=時事の記事を見てみましょう。

トランプ大統領は、ロシアからドイツに天然ガスを供給するパイプライン計画「ノルド・ストリーム2(Nord Stream II)」に言及し、「ドイツはロシアによる捕らわれの身となっている。膨大なエネルギーをロシアから得ているからだ」と発言。続けて「世界中の誰もが、このことについて話している。われわれがドイツを守るために数十億ドルも払っているというのに、ドイツは数十億ドルをロシアに支払っていると」「ドイツはロシアに完全に支配されている」と語った。

アメリカは、「ノルド・ストリーム2に反対。「安全保障上の理由だ」としています。つまり、ドイツ、欧州のロシアガス依存度が高まるのは脅威だと。

それに、「ウクライナが外されて貧乏になる」という理由もありますね。2014年2月まで、ウクライナの大統領は、親ロシアのヤヌコビッチさんでした。しかし、今のポロシェンコさんは、バリバリ親米反ロシア。それでも、ロシアのガスを欧州に流す「トランジット料」はほしい。アメリカは、親米ウクライナが貧しくなるのを防ぎたい。

さらに、シェール革命で世界1の資源大国に浮上したアメリカが、「欧州に液化天然ガスを売りたい」という事情もあります。というわけで、トランプさんは、「ノルド・ストリーム2」に反対しています。

このプロジェクトを推進しているメルケルさんは、どういう反応だったのでしょうか?

ドイツのアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)首相は一連の非難に対し、ドイツは「独立して決断」を下していると反論した。共産圏の旧東ドイツで育ったメルケル首相は、緊張感が漂うNATO首脳会議の会場に到着すると、「私自身もドイツの一部がソビエト連邦に支配されるという経験をしている」と語り、「今日、ドイツ連邦共和国として自由の下に統合し、その結果として、われわれ自身が独立して政策をつくり出し、われわれ自身で独立して決断を下すことができることがとてもうれしい」と述べた。(同上)

つまり、「トランプのいうことなんか、きかないわ!」ということですね。

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