ドイツに大声で激怒するトランプが「最大最強の味方」を失う日

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7月11日、NATO加盟国の首脳会議で米トランプ大統領はドイツを名指しで非難しました。これは、アメリカがNATO全加盟国の国防支出の7割近くを占めるのに対して、ドイツなど他の加盟国の負担が少なすぎることに腹を立てたのです。こうしたドイツと米国の関係悪化について、国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんは、自身の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』で、非難の理由はわかるとしながらも「対中露のために、米欧は協調路線を目指すべきだ」と論じています。

米欧関係を破壊するトランプ

ブリュッセルで7月11日、NATO首脳会議がはじまりました。ベルギーを訪れたトランプさん。早速、NATO加盟国、特にドイツを大声で非難しました。

トランプ大統領はイエンス・ストルテンベルグ(Jens Stoltenberg)NATO事務総長との朝食会の冒頭、儀礼的なものにするという慣行を破り、ドイツをはじめとする加盟国が費用を負担していないと激しく非難。
(AFP=時事 7月11日)

なぜ、トランプさんは、NATO加盟国、特にドイツに腹を立てているのでしょうか? 問題は二つです。

一つ目、トランプは、他のNATO加盟国の負担が少なすぎると主張している。毎日新聞7月11日。

NATOは2014年、対ロシア関係の緊張高まりを受け、24年までにすべての加盟国が国防費をGDP比で2%以上に引き上げる目標を設定した。しかし18年中に達成が見込まれるのは、加盟29カ国のうち米英やロシアに近い東欧中心の計8カ国のみだ。これに対し、米国はNATO全加盟国の国防支出の7割近くを占める。

アメリカはNATO全加盟国の国防支出の7割近くを占める。これは、ムカつく要因ですね。トランプさんが、「他の加盟国は、安保タダ乗りだ!」と考えるのも仕方ありません。それで、トランプさんは、この件でたくさんツイートしています。

こうした点に不満を持つトランプ氏は首脳会議前日の10日、「NATO加盟国はもっと多く、米国はより少なく払うべきだ。とても不公平だ」と主張するなど、通商問題も絡めながら欧州の加盟国を批判するツイートを繰り返した。(同上)

アメリカは、欧州を守っているのに、彼らは実質何もしないし、金も出さない。不公平だと思わないか?」

こういうロジックは、わかりやすく庶民受けするのでしょう。トランプさん、選挙戦中ずいぶん日本をたたいていました。その時は、「日本が攻められたら、アメリカは、日本を助けなければならない。しかし、アメリカが攻められたら、日本は何もしなくていいんだ。これは、不公平だと思わないか?」というと、支持者の皆さんが「いえ~~~す!!!!」と大声で叫んでいました。

そして、トランプさんの主要なターゲットは、欧州最大の経済大国ドイツです。なぜ?

とりわけトランプ氏が標的とするのは欧州最大の経済大国ドイツだ。ドイツの国防費はGDP比約1.2%で、24年までの引き上げ目標も1.5%にとどまる。(同上)

なるほど~。ドイツは、GDP世界4位、欧州1の経済大国。エマニュエル・トッドさんは、「EUは実質ドイツ帝国だ!」と断言している。それほどパワーのある国なのに、国防費は、GDPの1.2%しかない(ちなみにアメリカの軍事費は、GDP比で3.1%。日本は、約1%)。

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