ドイツに大声で激怒するトランプが「最大最強の味方」を失う日

 

トランプ外交は、アメリカを弱める

トランプさんのロジック、皆さん、どう思われますか? 少なくとも「一理あるな」と思われるのではないでしょうか? そうなのですが、これらの問題を「大声」でいうのは、どうだろうかと思います(大声でいうことで、支持率を上げたいのでしょう)。世界中に、「俺は欧州にケンカ売ってるんだぜ!」と宣言しているようなものです。

今の世界情勢を、少し見てみましょう。1991年末、ソ連が崩壊し、米ソ二極時代は終わりました。そして、「アメリカ一極時代」がはじまった。しかし、この時代は、08年の「100年に1度の大不況」で終わりました。

今は、「米中二極時代」です。自覚しているしていないはともかく、アメリカと中国が世界の覇権を争っている。どっちが勝つのでしょうか?

実をいうと、勝敗は、「その他の大国の動向で決まることが多いのです。「その他の大国」とは? 日本、EU(国ではないが)、ロシア、インドなどなど。そして、EUはアメリカにとって最重要のパートナー」であるはずです。

なぜ? まずEU(イギリスも含む)は、世界GDPの約22%を占めています。2017年時点で約17兆ドル。アメリカは同年、約19兆ドル。米欧あわせて、36兆ドル。アメリカ最大のライバル中国のGDPは、12兆ドル。かなり追い上げていますが、それでも欧米の3分の1にすぎません。欧米に日本を加えれば、世界GDPの半分に達します。

米中で深刻な対立が起こったとしましょう。日欧米が一体化して中国に制裁すれば、中国経済を破壊することができるでしょう(日欧米は、クリミア併合後、一体化してロシア制裁を行っている)。

そして、アメリカと欧州は、29か国からなる巨大軍事ブロックNATOを有している。さらに、欧州の情報戦の強さもあなどれません。欧州は、「世界でもっとも人権を重視する地域」という評価を得ている。それで、欧州から発信される情報は、無条件で「真実」と認識されがちなのです。そして、なんといっても、欧米は「民主主義、自由、人権」といった価値観を共有している。

トランプは、「最大最強の味方を非難することで、欧米関係を破壊しています。結果、欧州は、中国の方にますます接近している。そういう意味で、トランプ外交で、アメリカは弱くなっています。

image by: Evan El-Amin / Shutterstock.com

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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