とにかく「憲法を改正した総理」の称号が欲しいだけの安倍首相

 

安倍官邸はこの国会においても、やりたい放題だった。権力の濫用、情報の隠蔽、改竄などの問題について、役所内の形ばかりの処分ですませ、首相とその周辺を真空地帯にしたまま、責任の所在を突き止めようとしない。

その姿勢は、政府に対する深刻な不信感を国民の間に残した。ふつうなら、このような政権のもとで、憲法改正など、できるはずがない。

しかし、自民一強、補完勢力多数の国会情勢や、内閣支持率の底堅さは不気味だ。自民党は、いざ国民投票となると、なりふり構わず、電通と組み、マスメディアに巨額資金を投じて、宣伝工作を仕掛けてくるだろう。

その効果は、国民への刷り込みはもちろんのこと、報道部門の自主規制にも及ぶ。電通や博報堂を通じたメディアコントロール安倍自民党の得意とするところだ。

安倍首相がなんとか命脈を保っているのは、日銀を支配することによってつくられた株高円安のおかげだ。目先の利益にこだわる経済界が自民党への資金提供や賃金アップで協力しているのも大きい。

異次元金融緩和は、出口を想定しない博打だ。アメリカがついている安心感からか、核のゴミの処理方法を考えないで作ったのが原発。それは福島で爆発した。同じことが異次元金融緩和にもいえる。健全なマネー政策に戻すための出口を探し始めた途端、アベノミクスのバブルは破裂するだろう。麻薬を打ち続け、きつい痛みをともなう出直しのきっかけを先延ばししているのが安倍政権の姿だ。

未来のことが分かったら苦労しねえよ、と麻生節が聞こえてきそうだが、昨今の日銀の動きをながめていると、この国はいつまで食っていけるのか、戦慄さえ覚える。

サンデー毎日7月29日号で、日銀と国の財政の危機について二人の識者が倉重篤郎氏の問いに答えている。

今の日銀をどう見る?

「日銀というのは…民間銀行がおかしくなったのを支える役割だったが、今は違う。日銀自身がリスクの火だるま、過剰なほどのリスクテーカーと化している」(河村小百合・日本総研上席主任研究員)

財政の状況を例えると?

タイタニック号のようだ。実は、まっしぐらに大氷山に向かって航行している」「日本の財政、経済に対する信任が崩れれば今日にでもおかしくなる」(小林慶一郎・慶大教授)

異次元金融緩和により、日銀が円紙幣を刷って大量に国債を買い続けている。そのため、いったん世界的な金利上昇局面が訪れるや、中央銀行の債務超過という前代未聞の事態にいたる可能性が高い。一橋大名誉教授、野口悠紀雄氏ら専門家が指摘し、警鐘を鳴らしている。

大氷山にぶつからないようにするには、いつか方向転換しなければならないが、そのためには死ぬほどの痛みを国民は覚悟せねばならない。

事実上、アベノミクスは破綻している。その原因の一つは、安倍首相が経団連など財界の保守的、保身的なお歴々と付き合ってきたからだ。古いビジネスモデルで成功した日本の巨大カンパニーで権力をふるう人たちである。新成長戦略を思いつくことは期待薄であろう。

安倍首相は岩盤規制の打破と言うわりに、肝心なところの規制改革には取り組めていない。経団連の巨大利権がからむ部分には手がつけられていないのだ。垂直統合型の古いビジネス感覚そのものが、岩盤である。

日本が得意とするモノづくりにこだわり、大きな未来を描けていない。安倍首相は自身の頭の中の凝り固まった岩盤を破壊したほうがよさそうだ。

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