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もはや限界。テスラ社CEOイーロン・マスクの悲痛な叫び

先日掲載の「テスラ社のイーロン・マスクに7兆円もの資金を提供する組織の名」でもお伝えしたとおり、8月8日に突如「テスラ株を非上場にする」とツイートし、世間を驚かせたイーロン・マスク。今回のメルマガ『週刊 Life is beautiful』では、著者で世界的エンジニアの中島聡さんが自身の経験を例にあげながら、「非上場化ツイート」の裏にあるイーロン・マスクの心情を類推しています。

※ 本記事は有料メルマガ『週刊 Life is beautiful』2018年8月21日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール中島聡なかじまさとし
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。

私の目に止まった記事

Musk tells newspaper he’s cracking under stress of Tesla job

突如、「テスラを非上場化する」と宣言して物議を醸しているイーロン・マスクですが、テスラとスペースXの両方のCEOをするのはかなりのストレスなようで、週の労働時間は120時間(全部で168時間しかありません)だし、慢性的な睡眠不足で、工場で眠る時には睡眠薬を服用するのが常、というとても不健康な状態だそうです。

非上場化のアナウンスも、他の取締役には相談せず、モデルSを高速道路で運転中にしたとのことで、日本だったら「運転中にスマートフォンを触って良いのか!」と大問題になりそうです。モデルSには自動運転機能があるので、それを使っていたのだと思いますが、交通規則には違反しています。

この記事には、「こんな状況に置いているのが悪く、取締役会は長期休暇を取らせるなどの処置をすべき」と書いてありますが、そんな処置を本人が簡単に受け入れるとは思えません

以前、イーロン・マスクがベンチャー企業のCEOの仕事に関するインタビューで、「やりたくないことをしなければならないことがある」のは仕方がないことで、その辛さに耐えられない人にはCEOは出来ないと言っていたのを覚えていますが、公開企業のCEOになると、それはさらに酷くなり、流石に耐えられなくなって来たのだと思います。

私自身も、エンジニアでありながらCEOをしていたので良く分かりますが、本来は「もの作り」が得意なエンジニアがCEOをすると、もの作りばかりをしていられなくなり、それが長く続くと「自分はCEOの仕事は向いていないのではないか」と思えてくるのです。

とは言え、テスラのような企業は、やはりCEOはエンジニアがやるのがベストなので、理想的には、日々の業務をしてくれる優秀なCFOとCOOを雇い、CEOの自分はもの作りに集中できる体制を作るのが一番良いと思います。

つまり、非上場化のツイートは、イーロン・マスクの「上場企業のCEOなんてやってられるか!という悲痛な叫びなのです。

まるでハリウッド映画を見ているようなドラマチックな展開です。

ちなみに、「Talking Tech with Elon Musk! 」というYoutubeビデオは、イーロン・マスクが普段どんなことを考えて働いているのかが良く分かるインタビューなので、イーロン・マスクやテスラのことを知りたい人にお勧めです。彼自身は、株価のことや(上場企業として必要な)情報公開のことなど気にせずに、ひたすらイノベーションを追い求めて行きたい人物なのです。

イノベーションという観点では、彼ほどテスラのCEOにふさわしい人物はおらず、早く非上場化するなり、優秀なCFO/COOを雇って、彼自身がもの作りに没頭できる環境を作るべきだと私は思います。

私の目に止まった記事2

Could iPhone-style contract manufacturing come to the car industry?

Appleは自分自身は製造ラインを持たず、iPhoneの製造はFoxconn(鴻海精密工業)に任せていますが、同じように、将来は自動車メーカーもそうなるのではないか、という記事です。

現時点では、自動車メーカーにとって、製造ラインは他社との差別化という意味でとても重要な意味を持っています。トヨタ自動車は、「カイゼン」や「カンバン方式」などの独自の製造方法で他社を圧倒する高品質な自動車を安く製造することにより、世界制覇を成し遂げました。

テスラも例外ではなく、ロボットを多用した最新の製造ラインに莫大な投資をしています。

しかし、それが変わろうとしている兆候があります。顕著な例が、この記事でも取り上げられているWaymo(Googleの兄弟会社)です。自動運転技術はWaymo自身が開発していますが、自動車そのものはクライスラーに作らせています

Waymo以外にも、Uber、Appleなどが製造ラインを持たずに自動運転車の開発をしており、彼らが本気で市場に参入する時代には、製造ラインを持たない自動車メーカーがあたり前になっている可能性は十分にあります。

ちなみに、私の会社(Xevo)がビジネスで深い関係のあるトヨタ自動車は、e-Paletteというコンセプトを発表しましたが、これもそんな時代を見据えた、自動車のアーキテクチャだと私は理解しています。トヨタ自動車は、ハードウェアと最低限の安全走行ソフトウェア(“Guardian”と呼んでいます。参照:How Does Toyota Guardian & Chauffeur Autonomous Driving Work?までを提供し、それを人が運転しても良いし、UberやAppleが開発した自動運転ソフトウェアが運転しても良いのです。

image by: shutterstock

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