市場を拡大するためにどんな新商品を展開すればよいか。そのお手本ともいえる製品が登場しました。今回の無料メルマガ『MBAが教える企業分析』では著者でMBAホルダーの青山烈士さんが、その名も「パン好きの牛乳」を売り出すカネカ食品の戦略を詳細に分析・紹介しています。
市場を拡大するための打ち手
注目を集めている牛乳を分析します。
● 製パン製菓などの事業を行うカネカ食品の「パン好きの牛乳」
戦略ショートストーリー
パン好きな方をターゲットに「独自製法」や「北海道の酪農家と連携」に支えられた『パンに合う』『コクがあるのに後味すっきり』等の強みで差別化しています。
パン関連のイベントでのアピールにより認知度を高め、販路を拡大するとともに、パンを引き立たせる牛乳として新たな価値を提供することで、顧客の支持を得ています。
■分析のポイント
市場を拡大するための打ち手
「パン好きの牛乳」は牛乳ではありますが、主な競合は既存の牛乳ではないと思われます。なぜなら、「パン好きの牛乳」が選んだ戦う場所は、パンを食べる時に飲むものだからです。
パンを食べる時に飲まれるものは牛乳の場合もあるとは思いますが、コンビニでは、朝食や昼食の時間帯にパンと一緒に買われるのは、ペットボトル飲料が中心です。パンと一緒に牛乳を買う方は少数派といえるでしょう。
「パンを食べる時に飲むもの」と商品を位置付けた時点で、牛乳以外のコーヒーやお茶、水など様々なものと戦うことを選んだということです。言い換えると「パン好きの牛乳」は、様々なペットボトル飲料などから、パンのお供の座を奪うこと、つまり、牛乳に消費者を引き付けるためにリリースされたということですね。「カネカ食品」は日本の乳製品市場の拡大を目指しているので、理にかなった商品展開といえるでしょう。
そして、「パン好きの牛乳」というネーミングも素晴らしいです。いままでパンの味を引き立たせることを強みとするような飲み物はなかったと思いますので、その価値を商品名でわかりやすく示したネーミングは絶妙だと思います。パン好きな方は、自分のために作られたという印象を持つのではないでしょうか。
現在は、お米よりもパンの方が消費量が多いわけですから、多くの方が注目する商品だと思いますし、多くのパン屋さんにとっても、「パン好きの牛乳」の人気が高まればパンの人気も高まるという相乗効果が期待できるので嬉しい商品だと思います。
既存の飲料とは異なる価値を持っている「パン好きの牛乳」の今後に注目していきたいです。
◆戦略分析
■戦場・競合
- 戦場(顧客視点での自社の事業領域):パンを食べるときに飲むもの
- 競合(お客様の選択肢):既存の牛乳、コーヒー など
- 状況:飲用牛乳の生産量は縮小傾向のようです。
■強み
1.パンに合う
- パンの美味しさが引き立つ
- 牛乳臭さがない
- パン以外の食事にも合う
2.コクがあるのに後味すっきり
- ほどよい甘さ
- 深いコク
- さっぱり(口に残らない)
★上記の強みを支えるコア・コンピタンス
- 独自製法
(有機乳製品をヨーロッパ各国に展開しているベルギーのPur Natur社との技術提携) - 北海道の酪農家と連携
- 全国各地に拠点を配置した物流網を構築しており、常温・冷蔵・冷凍の3温度帯での製品保管・輸送が可能
上記のような、独自製法と酪農家との協力関係などが強みを支えています。
■顧客ターゲット
- パン好きな方
◆戦術分析
■売り物
『パン好きの牛乳』
- 北海道の生乳100%を使用
- Pur Natur社製法
→生乳加熱時の温度と時間を丁寧に調節
■売り値
- 500mlパックで、220円前後
■売り方
『パン関連のイベントなどでアピール』
- 80店舗以上の多様なパン屋が集まる「第13回 青山パン祭り」で配布
→2日間の開催中に、約5,000人が試飲 - 「第7回ベーカリー&カフェジャパン2018」に出展し配布
■売り場
- 首都圏、関西圏のパン屋にて販売
※ 売り値や売り物などは調査時の情報です。最新の情報を知りたい場合は、企業HPなどをご確認ください。
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