ところが、中国との経済協力をもって、沖縄の中国化や、独立運動の盛り上がりを指摘する論者が後を絶たない。
陸上自衛隊少年工科学校で学んだ経歴を持つ日本沖縄政策研究フォーラム理事長、仲村覚氏は昨年6月25日のオピニオンサイト「iRONNA」に、「中国の『沖縄包囲網』は最終段階に入った」と題する文章を寄稿した。
沖縄県と福建省の経済的な動きは既に加速度的に進み始めている。(中略)日本では日中国交正常化以来、中国に進出した企業の多くは、人件費の高騰や政策変更などリスクがつきまとい、撤退を始めている。(中略)しかし、現在の沖縄では、福建省に進出するといえば誰でももうけさせてもらえるような、上げ膳据え膳のサポート態勢が整いつつある。(中略)一方、観光客のみならず、さまざまな切り口で沖縄に中国人を呼び込むプロジェクトも進められている。(中略)このままいけば、沖縄では中国人観光客があふれるだけではなく、「社員が中国人」という会社が多くなり、「私の会社の社長は中国人」というケースも増えていくことになるだろう。(後略)
こういった議論は第2次安倍政権が発足して以降、顕著にみられるようになった。元海上自衛官のジャーナリスト、恵隆之介氏は2013年の時点で『中国が沖縄を奪う日』という、センセーショナルな題名の本を刊行した。
そこには、沖縄県と福建省の親密な関係とともに、中国の陰謀めいた沖縄介入ストーリーがまことしやかに書かれている。その概略はこうだ。
中国は1960年代から日本国内の左翼勢力を煽動して沖縄復帰運動を支援した。2013年5月8日には「人民日報」に、尖閣諸島は中国固有の領土という従来通りの論調を展開したうえで、沖縄についても「帰属問題は未解決である」と主張した。
東シナ海の支配と西太平洋の制海権確保を目論む中国軍が照準を定めている沖縄では、相変わらず反米・反日運動や独立運動が展開されている。2013年5月15日、本土に復帰して41回目の記念日に日本から独立することを目標に「琉球民族独立総合研究学会」という団体が発足した。沖縄では近年、基地反対運動などにおいても中国人の存在が目立つようになっている。中国が沖縄の極左グループを背後で操り、執拗にオスプレイ反対運動を展開している。
日本の基地反対運動を中国が背後から支援したり操ったりしているというのだが、その具体的証拠がこの本に示されているわけではない。誰がどう動いているのかなど、仔細な説明が必要であろう。
沖縄の若者にも「ネトウヨ」が増えていると聞く。「玉城デニーが当選すると沖縄が中国に乗っ取られる」という、まったく根拠のない言説や風評が、基地問題に無関心な層にかなりの程度で浸透したことがネット上の数々のコメントでうかがえる。
辺野古基地新設反対派は左翼で、左翼は反日、売国奴、親中であるというステレオタイプな物の見方が広がっているとすれば、危険きわまりない。
しかし幸いなことに、デマが沖縄県知事選の結果を左右する愚は避けられた。中国の脅威がないわけではないが、辺野古の米海兵隊基地が建設されなければ、日本の防衛ができないというのはウソである。
左右のイデオロギー対立が問題の本質ではない。人の命と生活、素晴らしい自然環境。それを守るのが新知事の使命であろう。
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