誰が「玉城デニー当選なら沖縄は中国に」というデマを流したのか

 

それでも、極端論者はどんなときにも口を出すものである。たとえば、元東京新聞論説副主幹長谷川幸洋氏。玉城氏の基地反対は「お花畑論」だとして、次のように書いた。

こんな人物が知事になったら、沖縄の支持者だけでなく、中国や北朝鮮は大喜びだろう。祝電どころか、祝意表明の代表団を送ってくるかもしれない。そうなったら、歓迎の中国国旗(五星紅旗)が沖縄中にはためくのではないか。光景を想像するだけでも、ぞっとする。
(9月26日、夕刊フジ・ニュースの核心)

評論家八幡和郎氏は「アゴラ」という言論サイトに、「玉城デニーの沖縄アイデンティティは中国に無警戒」「沖縄が中国人に乗っ取られる日」と題する記事を連続投稿し、こう指摘した。

(中国が)太平洋への進出を狙っているのは、南シナ海での埋め立てや軍事基地化でも明らかである。また、中国からの移民圧力も強いし、それを中国政府は後押ししている。そういうなかで、よほど、気をつけていないと、中国は軍事拠点として沖縄を狙うだろうし、移民などを送り込んで来る危険性が高いのである。…いずれ、沖縄住民の多数派になってしまう可能性も強い。

この二人の識者に共通するのは、辺野古基地建設に反対するような人が知事になったりしたら、沖縄を虎視眈々と狙う覇権国家・中国の餌食になってしまうということである。

中国が沖縄に何らかの野心を持っていると考えることに不思議はない。その昔、琉球が中国の支配下にあったのも確かである。だからといって、辺野古の基地建設に反対する知事は、日米安保を軽んじて中国には無防備であるかのごとき印象操作をするのはいかがなものか。

こうした言説が、SNSなどで拡散され、独り歩きしたのが「玉城知事になったら沖縄は中国に占領される」という短絡的なストーリーなのかもしれない。

もちろん、沖縄県が近年とくに中国企業との経済交流を活発化しているという側面はある。

アジアの巨大マーケットの中心に位置する地理的優位性を生かし、国際ビジネス都市に飛躍しようというねらいで2015年9月に「沖縄県アジア経済戦略構想」を策定した。アジアをつなぐ物流拠点▽世界水準の観光リゾート地の実現▽沖縄IT産業戦略センター(仮称)の設立などを掲げている。

アジアの巨大マーケットといえば当然中国ということになる。昨年には、沖縄県と福建省が友好県省を締結して20周年を迎え、翁長知事ら約110名が訪中し、中国のベンチャー企業関係者らと交流した。

経済交流を活発にしたら中国に乗っ取られるというのなら、いまの日本経済全体が中国の旺盛な消費に依存している現状も、問題にされなくてはならないだろう。

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