ドバイと言えば今や世界中の富が集まる地として知られていますが、かつては不毛の地だったといいます。同じく砂漠地帯だったラスベガスも、今や一大歓楽地としての地位を誇ります。何が今日の繁栄を可能にしたのでしょうか。今回の無料メルマガ『戦略経営の「よもやま話」』では、「イノベーション」に焦点を当てその秘密に迫っています。
機会とイノベーション
すべての「機会」の根源は「顧客」にあります。もちろん顧客には、中間業者を入るのを忘れてはいけないのですが、要点は「商品、サービスつまり企業が提供する『効用』に対価を支払ってくれるのは顧客である」ということと「企業は、顧客及び社会に貢献することで繁栄する」という事実からスタートすることです。
とっぴな例をあげると、多くのラクダを連れた隊商が通る砂漠の中間地点で豊富な水を供給する井戸を持っていたとします。
この井戸の所有者には、井戸を持っている権利でそこを通り利用する隊商からそれ相応の「対価」を得ることができるでしょう。最初に何らかの手がかりがあったかもしれませんが、そこに井戸を掘りあてた砂漠の民は大きな決断と困難があったでしょう。これは立派な「革新」的な行為だと言えるでしょう。
また、そこに井戸があることを知ってラクダの隊商を組み、新たなビジネスの機会と捉えて果敢に挑戦し実行した商人たちの行動も、やはり「冒険」的な活動であると言えます。
砂漠つながりでさらに考えますと、アメリカのネバタ州にある「ラスベガス」の今の繁栄は、これはイメージしやすい「イノベーション(革新)」だと言えそうです。ネバタ州は何の産業もない州なので、このオアシスの街に「バクチ」が許されたのが「歓楽の街」としてのはじまりですが、ただ賭博ができるというだけではあれほどの発展はなかったでしょう。
「ラスベガス」が一大歓楽地になることに最初に貢献したのが「マフィア」だったそうですが、そこにホテル群を建設してそして集客のためにフランク・シナトラやサミー・デイヴィスJr.などのエンターティナーを呼び寄せ総合歓楽施設につくりあげたのです。「カジノの収益金」目当てですが、これも「イノベーション」でしょう。
さらに、砂漠つながりで考えますと、ドバイはペルシア湾に面した平坦な砂漠地にあり、かつ石油の恩恵はほぼゼロといった不毛な地帯です。ただイギリス統治時代から貿易の中継地として重宝がられ、歴代首長が自由貿易政策を採ったことで中継貿易港としての色合いを濃くして行きます。
いつもそうなのですが逆境を反転させるにはその方法は1つしかなく、何らかの「強み」に賭けて集中的にそのことを活かして「イノベーション」を断行することなのです。
ドバイの場合、近代的な都市を夢見た当時の首長ラーシドが、原油に依存できないので経済特区と浚渫工事し大型港湾を確保して航空の就航も開始して、国外資本や外国企業の進出を受け入れあわせて「人」と「物」の集積地としての発展を急速に促して行きました。その後中継貿易港としての基礎固めをして、以後の大発展につなげました。
「イノベーション」の「意味」「意義」をまとめて行きます。
たえず「大」が崩壊して、それと交代して「小」から「大」が生まれます。そこにおいては「改善」「改良」などの同一軸での修正だけでは対応できない「変化」という基本的な避けがたい流れがあります。時代の流れは、あらゆる事象に安定を許さず否応なしの飛躍を求めます。そこでは、いつも「機会」と「脅威」が同居しています。
この「流転の法則」にどうするか対応するか、それはただ1つで、この法則つまり「時代の欲求」を「より良くする」ための「機会」と捉えて、「イノベーション(革新)」して行く、ドラッカーが説く「顧客からスタート」し「勇気をもってリスクをかけて意思決定し『成るまで実行』して行く」。方法はこれしかありません。
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