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中国で仕事する日本人が素直に感じた「このままだと日本ヤバい」

ビジネスのため中国に長年住み続けている、無料メルマガ『上海からお届け! 簡単3分、写真で覚える生活中国語』の日本人著者であるジンダオさん。先日、仕事で中華系企業の工場を訪れた際に、そこで出会った日本人のシニア技術者たちの仕事ぶりを見て、大いに考えさせられたそうです。日本は技術の面でも、早晩中国の後塵を拝するかもしれない……そう思わせた出来事について、ジンダオさんが詳しく語っています。

工賃が安い中国で自動化・無人化を進めるワケ

私は仕事柄、中国の工場を訪問する機会があるのですが、先日中国の中部にある工場を訪問した時に度肝を抜かれたというか、考えさせられる出来事がありました。

訪問したエリアは湖北省と呼ばれる中国中部にあるエリア。

上海から高鉄と呼ばれる新幹線を使うと最速で4時間で行ける場所です。都心部は都市開発を急速に進めていて地下鉄工事や商業施設、誘致を受けた工場などの工事の真っ只中。まだ下町のエリアは残っているものの、建設ラッシュが始まった姿は十数年前の上海を彷彿とさせます。

一般的な庶民が食す軽食を扱う店舗は、上海に比べると3割から半額程度の値段設定。もちろん生活費が安い訳ですから給与も低く、繁華街で見かけた日本レストラン募集の給与は3,500元(18年11月レート換算5.8万円)。若手サラリーマンの給与でも4,000元程度(18年11月レート換算6.5万円)とのことで、この辺も上海などに比べ賃金も4割くらいは安い状態です。

そんな情報を仕入れつつ、訪問先の工場が完全な「中華系企業」であったため、勝手に「工員が多く働いているのだろう」と想像しながら訪問したのですが、それが完全な間違いでした。

訪問した工場構内、整然とされていて非常にキレイ。そして人がいない。基本的に機械が加工を行い、工員は部材を準備している程度。整列された工場機器に数えるほどしか居ない工員達。想定外の出来事でした。

工賃が安いエリアに工場があるので、数多くのスタッフを雇い製造を行っていると思っていたのが、カナリ機械化を進めているのでした。

中華系企業ですが、お会いした相手は日本人。業界に精通していて、簡単な話「ヘッドハンティング」で採用された方。与えられた使命は企業の効率化やカイゼン。その為ある程度の費用が掛かっても、自動化無人化など「人を減らせる提案」を求めているという事でした。

工賃が高い日本で自動化や無人化を進めるというのは理解できますが、工賃が安い場所でも自動化や無人化を進める中華系企業。日本人には考えられないかも知れませんが、その背景には少しでも条件の良い給与先を求めて、ある一定の年齢までは転職を繰り返すという中国人スタッフの姿があります。

雇う側からすれば、仕事を覚えた頃には転職。人の入れ替わりが激しいと、ルールの徹底ができず品質が安定しません。そこで、生産の標準化を実現するために、費用がかかっても自動化や無人化を進めて、一定の標準化や規則に従うよう管理を行いたいという事のようでした。

そして、その任務を担っているのがカイゼンのプロ、日本人なのです。

中国で働く日本人駐在員たちの情けない姿

打ち合わせでは、その方と話をさせてもらったのですが、とにかく判断と決断が早い

ヘッドハンティングされているため、結果を求められる。そして経営陣も日本人に期待をして雇用している。契約の一年一年が勝負なのでしょう。決めたことをバンバン推し進めてカイゼンを実行しているようでした。

費用に対しての決済権もある程度は任されているようで多少コストが掛かっても、問題が解決してその後の運営の判断が良くなるなら全く問題ない。次の訪問時は提案と見積もり、関係者との手配と、30分の打ち合わせでスピーディに話がまとまりました。

個人的にはこのスピード感覚は非常に好きですし、中国では大変大切なスキルだと思っています。日本の場合はどうしても担当者が自分一人で責任を負うことを嫌うために、他の関係者を巻き込み責任分散を行います。そして多くの打ち合わせ時間と提案書を繰り返し提出して、ようやく見積書を提出……。

「組織で動いている」のは解りますが、基本的に日本人のポジションは責任者で、現地企業の方向性を決めて、現地スタッフを導く立場にあります。そんな日本人たちが、たまに「これって○○さんが担当で」「いや、これって○○さんが」といった責任のパス回しを、我々の眼の前でしてくることもあります。

正直みっともないというか情けないというか、日本本社の代表として看板を背負ってきている立場の日本人が、中国人スタッフがいる場所でそんな無意味な責任逃れの話を始める。

組織の中で生き抜くために大切な処世術なのかも知れませんが、中国人スタッフからすると、どんな風に映っているのだろうと思ってしまう場合があります。昔に比べて海外駐在員の質が下がったと言われるのは、この辺も関係しているかも知れません。

また見積額が大きい場合は、中国現地法人では決済が降りず、日本本社で判断という事も多々あります。日本側を説得するために、プロジェクトが進むまでに半年や一年といった時間が経過してからスタートという場合もあります。

そうこうしている間に、元々の担当者だった日本人が帰任になり、次の担当者は前任者の案件だったのでと及び腰になり、引き継ぎされておらず分からないと、またイチから説明をしなければいけません。

できれば何事もなく、何事も変えず、何事も問題を起こさずに日本に帰任したい、という気持ちをお持ちの駐在員も少なくないのですが、この積み重ねが今後の日本企業と中華系企業の間における大きな差となっていくのでは無いでしょうか。

技術の面でも競争力を失う日本

今回訪問した先の日本人のように、結果を求められ契約条件を持ったプロのスタッフの場合、行動力判断力も違いますし、行動を決めたあとの投資力が桁違いに違います

また品質に関しても、現在の日本は過去の蓄積や日本人気質とも言うべき勤勉さなどで、どうにかカバーをしてきている部分がありますが、最近の日本企業のデータ不正のニュースなど見ていると、「今まで中国企業をバッシングしていたのに、結局日本でも似たような事が行われているのね」と思ってしまいます。

日本企業は技術者に対して冷遇と言われることがあるようですが、給与面だけではなく今回お会いしたシニア層の技術者の方は、非常に生き生きと仕事に取り組まれていました。

その会社では、直接お会いした方以外にも日本人技術者が働かれているようで、休憩の合間に立ち話で打ち合わせをして物事を決め、次の行動に移されているようでした。結果がついて回るからかも知れませんが、自己責任で判断・行動し、余計な根回しや責任逃れの言い合いなども無い。だから生き生き働かれているのかも知れません。

技術者の彼らは、求められれば日本企業でも中華系でも働いて結果を出す。中華系は高給を与える変わりにノウハウを享受する。日本人の彼らは、高給以外にやり甲斐や自身の技術が求められている点に、喜びや価値を感じているのでは無いでしょうか。

日本企業に勤める中国人は、日本人との距離をうまい具合に保ち、「早く帰任しないかな」と思いながら、日本人の指示を「最低限守って」、したたかに仕事をしています。彼らからすると日本人は上司や仲間ではなく、日本から来たお客様程度の感覚なのです。

それは日本人が現地で情熱を傾けて仕事をしていないのが、彼らに見透かされているからこそ。日本人自身が招いた結果なのです。

中華系企業の経営者は、そんなしたたかな中国人の考えを把握しているので、中国人が結果を出せる土壌作りと、中国人を使わないで済む職場環境作りに余念が無いように感じました。

高給の日本人を雇ってでも、自分たちにない考えや発想を取り込んで、中国での激しい競争に勝ち残りたい。そんな貪欲な経営陣と、お客様扱いの日本人。日本と中国はIT業界においては差が開きつつあるという話もありますが、技術の面でも、日本は徐々に茹でカエルの如く沈んでいくかも知れません。

Photo by: ジンダオ

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【著者】 ジンダオ 【発行周期】 ほぼ 週末刊

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