現役アナが教える雨の日の風を「さわさわ」とは表現しない理由

 

サ行のみならず、他の音韻にもそれぞれの性質があります。ひとつひとつみていきましょう。ア行はどうでしょうか。子音が付いていない、アイウエオだけの状態は、音の性質は極めて中立的です。素直で、尖っておらず、丸い印象です。

子音が音韻の性質を決定づけるわけですから、子音が付いていないア行には性格が乏しく、よって、ア行+他の音によるオノマトペはありますが、「ア行だけ」で構成されるオノマトペは、数も多くありません。ほとんど思いつきませんね…。ウオーウオー、オエオエ、エイエイオー。叫びとか、嗚咽とか…。声そのものに由来する言葉なら考えられるかもしれませんね。

カ行はどうでしょうか。カ行もサ行と同じく、空気の音ですよね。でもサ行と違って、調音点がぐっと奥のほう、奥舌と軟口蓋の隙間を狭めて、呼気で破裂させて、音を作っています。ですから、乾燥感、空気感はありつつも、空虚ではなく、ちょっと小さめの「物質感」を伴いますね。

例えば、紙や枯葉が、「カサカサ」これはまさに、カ行とサ行だけで構成されていますが、その性質は、

  • 小さい
  • 軽やか
  • 物質
  • 摩擦
  • 硬質
  • 空気

カ行とサ行の性質そのものを、そっくりそのまま、よく表していていますね。

このように、オノマトペを普段何気なく使っている私たちにとっては、当たりまえすぎることではあるのですが、音韻の性質が、オノマトペの性質に直結しているんですね。

つまり、ここで注意しなくてはいけないのは、「音の性質に合わないオノマトペは、相手に伝わらない、違和感を持たれる」ということでもあるわけです。

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アナウンサー歴30年、極限の環境で話し続ける著者が、実体験から会得した「話し方のコツ」を理論化。人前で話す必要がある人の「もっと〇〇したい」に、お答えしています。一般的な「話し方本」には無い情報満載。

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