政府が推し進めている、ECビジネスやコンテンツ配信サービス、SNS運営企業といった「デジタル・プラットフォーマー」に関するルールつくり。目まぐるしいスピードで普及・拡大を続けるこれらのサービスに対し、政府としてはその動きにひとまず歯止めを掛けたいというのが本音のようですが、メルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』の著者でケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんは、デジタル・プラットフォーマーたちの進化スピードに、日本のお役所仕事が太刀打ちできるわけがないと断じています。
政府がプラットフォーマーに対しての規制を整備へ━━行政は巨大IT企業のスピード感についていけるのか
11月28日、経済産業省にて「デジタル・プラットフォーマーを巡る取引環境整備に関する検討会」が開催された。
グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップルの4社に声がかかり、プレゼンをするという話を聞きつけ、傍聴するのを楽しみにしていた。しかし、直前になって、登壇する企業が非公開での議論を望んだことから、一般には公開されなくなってしまった。しかも、登壇したのはグーグルとアップルのみで、フェイスブックは書面での回答、アマゾンに至っては敵前逃亡してしまったとのことだった。そんなことが許されるのかと、ちょっと驚きだ。
非公開のセッションのあとに、検討会の委員らによる議論が公開で行われた。このタイミングから、ようやく傍聴できたのだが、そもそも、その前に非公開で行われたプレゼンや質疑応答で何が語られたのかさっぱりわからない中で、いきなり議論が始まっても、傍聴している側としては話の展開がチンプンカンプンだ。あんな、中途半端な状態で公開するぐらいなら、すべて非公開で進めたほうがマシではないか。
それでも、展開の見えない議論を傍聴していたが、はっきり言って、日本の政府がグーグルやアマゾン、フェイスブックやアップルに対して、何らかの規制を設けようというのは、そもそも無理な話なのではないかという気になってきた。
今回の検討会では、経済産業省だけでなく、総務省や公正取引委員会などからも参加者がいたが、縦割り行政で、様々なプラットフォーマーたちに規制をかけようというのは、あまりに無謀すぎる。日本においても、LINEやヤフーなどは、単にネット向けサービスを展開するだけでなく、最近は金融事業に積極的だ。こうしたプラットフォーマーたちの将来的な動きを睨んで規制をかけるのであれば、金融庁なども参加して、議論を進めないことには手遅れだ。
また、IT企業たちは、圧倒的なスピード感で、新しいサービスを開発したり、新たな企業を買収するなどして、拡大を続けている。日本の行政が検討会を開催し、法整備を進めていくという時間軸で、プラットフォーマーたちの動きに太刀打ちできるわけがない。
総務省でのスマホ販売に対する規制もそうだが、お役所が自分たちの立場を振りかざし、規制をちらつかせ、仕事をしている風を装うというのは、良い加減、終わりにしたらどうなのか。行政の動きは、IT業界の足をひっぱり、イノベーションを妨げる効果しかない。
もちろん、巨大プラットフォーマーたちには、行政に突っ込まれないよう自ら規律を正して、個人情報保護などに務める必要があるのは間違いないだろう。
image by: Wikimedia Commons