なぜ人は「〇〇すると『必ず』××が起こる」表現を使うのか?

 

今、このような「必ず」的論法に新しいアイデアが移入され、新概念として一般に定着しつつある。所謂「フラグ」である。このフラグという概念は実に興味深い。というのも、それ自体(つまりは、ある特定の状況下における、特定の人物による、特定の言動)には吉凶の別がないにもかかわらず、「必ず」や吉事か凶事(特に凶事)を招来するものとして認定されているからである。その典型例としては「死亡フラグ」などがそうである。

しかもその認定過程がちょっと面白い。まず、第一に先行コンテンツ(ゲーム、アニメ、映画、ドラマ等)がある。その劇中の登場人物がある状況下において、特定の言動の後、死んでしまう。これを、死んでしまったのはあの状況下でのあの言動が原因である、と因果を逆に遡ってフラグ認定候補とするのである。しかし、それだけでは不十分で、この因果関係が多くのユーザー、視聴者、鑑賞者によって「ある、ある」「ありそう」「ありがち」といった具合に共感を得なければならない。こういった集団共感を得て初めてフラグ認定となるのである。

ひょっとしたら、これらのフラグも何十年かすれば、今で言う縁起が悪いこと、例えば「夜に爪を切る」だとか「畳の縁を踏む」のようにレトリックの一つとして堂々と日本語表現の一角を占めるようになっているかもしれない。

その時、その起源に思いを馳せれば「如何にも21世紀の日本っぽいな」と誰もが感じざるを得ないのではないだろうか。

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ここにあるエッセイが『8人ばなし』である以上、時にその内容は、右にも寄れば、左にも寄る、またその表現は、上に昇ることもあれば、下に折れることもある。そんな覚束ない足下での危うい歩みの中に、何かしらの面白味を見つけて頂けたらと思う。

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