大マスコミが報じない経団連会長「原発はもう無理」発言の衝撃度

2019.01.16
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それにしてもマスコミはどうしたのだ!

この経団連会長の重大発言を、マスコミがろくに報道すらしないのはどうしてなのか。12日付朝日は「原発輸出政策、総崩れ」、同日の日経も「日本の原発、袋小路に」と題したかなり大きな記事を掲げているが、いずれも日立の英国事業断念を中心に説明していて、中西発言には触れていない

そもそも元日の中西の年頭会見をマスコミがここまで隠し通そうとするのには、一体、どういう力が働いているのだろうか。唯一キチンと報道した「東京新聞」の知り合いに聞くと、「〔報道しなかった東京以外の〕他社がどういう判断をしたのか分からないが、成長戦略の要である原発輸出がダメになったことがいうのがさんざん報じられた後なので、ネグったのかもしれない」と言う。それはそうかもしれないが、輸出がダメになったということと国内も止めたということの間には大きな飛躍があって、記者たちがもっと驚くべきではないか?

「政権と経団連との力関係が完全に政権優位に変質しているので、経団連会長の発言の重みが昔ほどないということが大きいのではないか」

しかし、いくら力が衰えたとはいえ経団連会長の発言である。日本資本主義の機関紙とも言われる日経は中西会見をどう伝えたのかを、同紙電子版で見ると、「エネルギー危機打破する1年に/経団連・中西宏明会長」という記事はあるにはあるが、肝心の原発の部分はスッポリと抜けている。同記事の全文はこうである。

経団連の中西宏明会長は日本経済新聞などとの年頭のインタビューで「日本のエネルギーの状況は危機的だ。打破する1年にしたい」と語った。構造改革の先頭を走るとの意向も示した。詳しい発言は以下の通り

 

──2019年は改元を控える転換の年です。

 

「平成の30年間は高度成長期が終わり、グローバル化の大きな矛盾点がぶつかりあった30年だった。安倍政権で経済環境は大きく変化した。電機業界はその典型で優勝劣敗がはっきりついた」

 

「日本のエネルギー問題は危機的だ。コストが高く、世界から批判され、再生エネルギーを増やせず、投資は停滞している。11年の東日本大震災から3年くらいは世界中が『仕方ない』と言っていたが、最近では同情はない。どうするか真剣に討論すべきだ」

 

──消費税率が10%に上がります。

 

「やらざるを得ないしやるべきだ。政府も再三決意を表明し、手厚いくらいの対策を打つ。経済界も全面的に協力する。そうでないと財政問題を解決するアプローチが見えない」

 

──データ覇権を巡り米中摩擦が激しいです。

 

「2~3カ月の間に経済情勢がごろっと変わる。技術覇権の問題は関税の引き上げとは違った類いの争いだ。特に華為技術(ファーウェイ)まわりは、関連する企業への波及が出てくる。グローバル経済のブロック化が生じる。過去に米国はこういう手を何度も打った。日本経済の強みをどういう形でどう発揮するのか。高らかに宣言してやらないと変なことになる」

 

──日本の経済のデジタル化をどう促しますか。

 

「人口減少という深刻な事態に直面する。デジタル化の波を日本経済を後押しする波として受け止め、成長の力にして展開していく。真正面から受け入れるには構造改革が必須で時間もエネルギーもいる。そういう動きが本格的に展開する年なので先頭を走りたい。推進する力は従来型の産業より新しい方が強い。経団連に新しい会員を増やす努力を続けていく」……

察するところ、2番目の「日本のエネルギー問題は危機的だ」というパラグラフが、どうも本稿冒頭に▼印をつけて引用した中西発言を“翻訳”したものであるらしい。しかし、この文章は、何を言っているのかさっぱり分からない。

「危機的」なのは「日本のエネルギー問題」ではなく、「日本の原発」でしょうに。「コストが高く、世界から批判され、……投資は停滞している」というのは、何が主語なのか不明だが、たぶん「英国への原発輸出」でしょうに。「11年の東日本大震災から3年くらいは世界中が『仕方ない』と言っていたが、最近では同情はない」とは、何に対して「世界中が『仕方ない』と言っていた」のか不明。おそらくは「まだ原発を続けようとしている」ことに対してでしょうに。

訳が分からない。こうなるとどうしても中西発言の全文を手に入れなければならないが、経団連HPの「会長コメント/スピーチ」欄を見ても、1月1日付では「Society 5.0 for SDGsの実現に向けて/経団連会長新年メッセージ」という全く間抜けな文章が載っているだけで年頭記者会見についてはそれが行われた事実さえも掲載していない

消えた経団連会長の重大発言……。権力による言論封殺なのか、それとも経団連官僚からマスコミのほとんどまでが結託した“忖度”なのか。この国ではどうも、ボーッと生きていると、国の運命に関わるような重大ニュースもいつのまにか消されて「なかったこと」にされてしまうようである。

※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2019年1月14日号の一部抜粋です。初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分税込864円)。

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