ハタハタは筆者の故郷の秋田県では好んで食べられる大衆魚であるが、別名「猫が跨いで通る魚」とも言われ、高級魚ではない。しかし、幼いころ、山間部で暮らしていた人たちにはハタハタはこの上ない高級魚であり、貴重なタンパク源であり、美味しいおかずでもあった。
トラックの荷台には「木箱に入れられたハタハタ」が積まれており、買うほうも数匹単位ではなく、木箱ひと箱分をそのまま買っていた。安かったのだろう。手っ取り早く焼いて食べるのが普通であったが、金持ちの家では煮物にしておいしく食べていたが、私にはそのような食べ方をした記憶はない。
この記事で、金正恩は船べりに腰かけて、延々と水産事業所の職員と漁師たちに「魚を獲ることがいかに大事か」ということを話しかけているが、彼の乗っている船は鋼鉄製の頑丈な近代的な装備を備えた船であり、日本海岸に流れ着く船の類ではない。
この男は母船に乗って横柄な態度で「水産事業の大切さ」を説くのであるが、この母船に曳航されて日本海の荒波の中で漁をする木造船のことなど考えたこともないようで、盛んに「漁師は戦士、漁場は戦場であり、荒波なんぞを恐れずにただただ魚だけを獲れ」と言っているのである。
漁労を拒否することはできない。忌避すればそれはすなわち粛清されるのみである。
『画報 朝鮮』は北朝鮮の代弁誌であるから、日本に漂着するような船類を紹介することはないだろうが、出港して再び故郷の土を踏むことなく、海の藻屑と消えていったり、異国の地に無縁仏として葬られている北朝鮮の漁師の数は年に1,000人は下らないだろう。(宮塚コリア研究所代表 宮塚利雄)
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