2月10日の自民党大会の演説で「民主党政権時代は悪夢だった」と発言し、後に国会で追求されてもその撤回を避けた安倍首相。公の場で含みを持たせた今回の言動の真意はどこにあるのでしょうか。無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者で国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんは、2009年から12年までの民主党政権時に、日本で起きた「事実」を外交関係を中心に解説し、悪夢発言の解明を試みています。
民主党政権時代は【悪夢】だったのか?
安倍総理の、「民主党政権時代は【悪夢】だった」という発言が話題になっています。
首相「少なくともバラ色ではなかった」 民主党政権「悪夢」発言の撤回を拒否
産経新聞 2/12(火))11:46配信
安倍晋三首相は12日午前の衆院予算委員会で、10日の自民党大会の総裁演説で民主党政権時代を「悪夢」と表現したことについて「総裁として、そう考えている」と述べ、撤回を拒否した。「少なくともバラ色の民主党政権ではなかったのは事実だ」とも述べた。
これ、どうなんでしょうか?
公平であるために、一つ書いておきます。それは、「民主党政権が生まれたのは、その前の自民党政権がダメだったからだ」ということ。私は09年、ちょうど民主党鳩山政権が誕生した時、一時帰国していました。国全体の「高揚感がすごいな」と感じたのをよく覚えています。
ところが…。その後、民主党政権で、日本は大変なことになっていきました。まず鳩山政権が、「日米関係を破壊したこと」は、あまりにもよく知られています。普天間基地の移設先について、「最低でも県外!」と宣言していた。この問題が大きく拡大し、今に至るまで解決していません。
一方で、鳩山内閣は、「中国の属国になります!」宣言をしています。09年12月、小沢一郎幹事長は、483人の大使節団を率いて訪中。胡錦涛に、「私は、人民解放軍の野戦軍司令官である!」と宣言した。つまり、小沢さんは、「私はあんたの部下ですよ」といった。そう、鳩山政権は、同盟国アメリカとの関係を速やかにぶち壊し、共産党の一党独裁国家中国に、「属国になります!」と誓ったのです。
ところが…。幸いというか、鳩山政権は、1年も持たずに崩壊しました。そして、次の菅さんは、「やっぱアメリカを敵にまわすと短期政権に終わる」と悟り、すり寄ることにした。TPP推進を目指し、「第三の開国を決意した!」などと発言した。
2010年9月、「尖閣中国漁船衝突事件」が起こりました。これ、証拠映像があるのに、菅政権は中国に遠慮して隠すことにした。それで、日本は何も悪くないのに、決定的に不利な状況になってしまいます。中国政府高官は以後、世界中で、「尖閣は、中国固有の領土であり、核心的利益である!」と公言してまわるようになります。そして中国は、「レアアースの禁輸」など、過酷な制裁を課して日本を苦しめました。
ここまで。鳩山政権は、日米関係を破壊した。菅政権は、日中関係を破壊した。この時点で、日本は、アメリカとの関係も中国との関係も悪いのです。菅内閣は、2011年9月までつづきました。
野田内閣がはじまりました。2012年7月、ロシアのメドベージェフ首相が、北方領土、国後島を訪問。日本国民は激怒していました。これで、日ロ関係は、悪化。2012年8月10日、韓国の李大統領が、竹島に上陸。8月14日、彼は、「日王が韓国に来たければ謝罪せよ!」と発言。日本国民は激怒し、日韓関係は最悪になった。そして、2012年9月11日、野田内閣は「尖閣購入」を宣言。日中関係は、「戦後最悪」になってしまいます。