私がお世話になっているトレーナーさんはあの白鵬関とも親交があるらしく、間近で取り組みを見られたことがあるそうです。トレーナーさんですから「凄い!」と思うことはいくつもあると思うのですが、最も凄いと感じたのが下半身の安定さと腰から上の柔らかさ、この対比なんだそうです。特にこの上半身の柔らかさがとんでもないのだとか。
私の説明でうまくお伝えできるか甚だ不安ではありますが(汗)、白鵬関は相手から攻めてこられてもその場から足が動くことなく、その相手の攻めの手をことごとくその柔らかい上半身で、相撲で言うところの“いなし”で無力化してしまうように見えるんだそうです。
相手は訳も分からないまま体力を奪われ、気づいた時には横綱にまわしをとられ、投げや寄りに対抗する力をもはや残されてはいない状態で負けてしまうんだそうです。
今でこそ怪我の影響や体力の衰えは隠せないところあるみたいですが、全盛期は本当に他の力士の勝ち目がなかったようです。
私はこの話を聞いて、横綱の強さの秘密の一端を垣間見ることができたということと、そのような慧眼を持っておられるプロのトレーナーの凄さに感動を覚えました。そして後日、このイメージが自分の怒りを鎮めようとする時に使えるな、と思いついてさらに感動しました。
すなわち、自分の中から湧き上がってくる感情を、差し手や張り手で攻めてくる相手の力士に見立てるわけです。相撲の一番が10分も15分続かないように、怒りの感情が攻めてくるのはせいぜい数十秒、いわゆる「大相撲」となっても数分です。怒りの攻撃を全て【いなす】ことができれば、もはや自分の怒りのエネルギーは枯渇しているでしょう。
そしてこのイメージが良いなと思うところは、自分の怒りだけではなく、怒っている他者と相対する時にも使えるという点なのです。自分に怒りを向けて来られる方の中には、その理由が全くもってこちらとしては納得できないことも少なくないのではないでしょうか。怒りに限らずネガティブな感情全般と言ってもいいかもしれませんね。
そういったネガティブな感情が理不尽にぶつけられるシチュエーションは、自分の怒りと相撲を取るのとは比べものにならないぐらいのパワーやテクニックが求められます。どんな攻撃を繰り出してくるか、予想もできないからですからね。
ましてそれが、「そう簡単にこちらも退くわけには、折れるわけにはいかない!」と自分が感じているような場合(相手)だと、もう本当に大一番です。
ただその時も基本は同じ。股関節を曲げてぐっと腰を落とします。それで足を動かさない(譲らない)のは大事なことですが、そこで自分が壁となってしまっては、エネルギーのある相手(怒っている人)であればより強力に攻めてくるかもしれません。