大きく動く前兆か。東京市場とNY市場に偶然生じた「奇妙な調和」

 

中国の現状と今後

3月15日まで、全人代が開催されて、今年1年の方針が発表された。李克強首相の演説で、無暗な量的緩和をしないとした。この理由を周小川中国人民銀行前総裁が述べて、「失われた20年の日本と同じになるので株価を維持するために政府が株を買うことはしない」とした。日本の失敗を中国は研究しているが、株買い支えは、株式市場を殺すことになると否定している。

このため、中国は減税やインフラ投資に33兆円もの景気対策を行うことにして、この政策で年後半には景気が戻ると見ているようだ。

しかし、現在、中国は、地方と企業の債務残高が9,600兆円と大量に積み上がり、それを追い貸しで支える状態になっている。特に国営企業を潰す訳にもいかず、経済は停滞し始めていたところに、米国の関税UPで輸出企業の生産が減速した。このため、米国と交渉して関税UPを止めて、その上で33兆円の景気対策が打たれれば、景気は回復する可能性もあるが、債務危機の問題は残り、その影響から景気回復できるかどうかという意見もある。

米中デカップリング論

しかし、中国経済の発展で、年収400万円以上の人口は、12億人の10%もいるので1.2億人と日本の総人口以上もいるし、年収1,000万円以上は1%になり、1,200万人もいる。一方、米国の人口は3億人で、中産階級以上は、多く見積り30%程度としても1億人程度上流階級1%とすると、300万人しかいない。そして、今後も中産階級は減少するので、市場規模は米国より中国の方が大きいことになる。

これにより、日本企業は、米国以上に中国が重要市場になっている。このため、日本企業は米中デカップリングをし始めている。米国と中国を分けて生産体制や製品設計をする方向にして、米中のハイテク戦争になって、輸出入ができなくなるとか、インターネットなどが繋がらなくなっても、大丈夫な環境を作るようである。このため、トヨタは米国に1兆300億円の投資をして、米国で製造を完結させるようである。同時に中国にも投資して、中国で完結する体系にする。

中国経済の高度化、大規模化により、米国市場を諦めても中国市場を取りに行くという選択をする国が増えてくる。その1つがイタリアで、中国の一帯一路提携国になった。ドイツも中国寄りで米国との関係をどうするか考慮している。韓国も中国寄りになっている。日本も一帯一路に協力すると米国べったりから中国寄りにシフトしている。

その上にトランプ大統領は、駐留経費の2倍を韓国やドイツ日本などに要求するというので、益々米国から距離を置くことになる。米国から中国に経済覇権は確実に移り軍事覇権も米国は放棄するので中国に傾くことになりそうである。

トランプ大統領の無謀な同盟国への要求と、米中通商交渉が決裂して、米中の選択を迫られたら、世界の多くの国は米国から中国へシフトする可能性も出ている。

という意味でも米国は中国との通商交渉を合意する必要があるし、今回の経緯から世界は、米国時代の終わりを意識し始めたようである。トランプ大統領の意図とは関係なく、米国が戦後初めて負ける事態になってきたとも言える。

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