面倒な作業は部下に丸投げ、自分はできるだけ楽する事を考えている。そんな「管理職」が幅を効かせているオフィスは風通しが悪くなってしまうものです。今回の無料メルマガ『採用から退社まで! 正しい労務管理で、運命の出会いを引き寄せろ』では著者で現役社労士の飯田弘和さんが、業績にも影響しかねない職務怠慢な管理職に、企業が法的に行える対処方法とその際の注意点を紹介しています。
管理職者の降職について
管理職とは、文字通り、部下を管理する職務です。すなわち、業務上の指示命令権限や管理監督権限を使用者に代わって行使することで、部下を指揮し組織の運営に当たるものをいいます。
ただ、管理職の中には、部下の管理を十分にできない者や、面倒な業務を部下に押し付けて自分は楽な業務ばかり行っている者もいます。何か問題が起きた時に、その責任をすべて部下に押し付けて逃げる者もいます。
このような者は、管理職としての適性や能力に問題があり、管理職としての職務への怠慢でもあります。このような者を管理職のままにしておくと、ろくなことがありません。
このような管理職に対しては、降職すなわち役職の引き下げや、あるいは職務怠慢に対する懲戒処分を行うことで対応していくべきです。
一般的に、役職者の任免や昇格・降格については、企業の人事権の裁量的行為とされています。ですから、管理職の役職を解くような降格についても、たとえ就業規則に根拠がなくても、人事権の行使として認められます。そして、降格により職務自体が変更された結果として、その職務に応じた賃金が支給されるのであれば、降格による賃金減額も許されます。
また、職務怠慢である管理職に対する懲戒処分については、就業規則に定めがあれば可能です。もちろん、「管理職務を怠ったとき」など、より具体的な定めがあるに越したことはありませんが、そうでなくても「職務懈怠」に対する懲戒として処分が可能でしょう。
ただ、人事権の裁量にしても、懲戒処分にしても、濫用はいけません。大した理由もない降格で相当の賃金低下を招く場合や、辞めさせる意図をもった嫌がらせ的な降格などは濫用となります。懲戒処分についても、処分の相当性が必要とされているので、職務怠慢の程度に対して明らかに重すぎる処分であると濫用と判断されます。
いくら後から降格や懲戒処分が可能だからといって、安易に、管理職に任命するのは、後々トラブルの元です。年功序列で一定年齢や一定勤続年数に達すれば管理職に就くという人事は改め、その者に管理職としての適性や能力が備わっているのかを慎重に検討して決めるべきでしょう。
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