マンションなどの共同住宅での音のトラブル。騒音を出して苦情を言われるのも、騒音を感じて辛い思いをするのも嫌なものです。今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』では著者の廣田信子さんが、決してそこに住む人の責任だけではない、「建築や設計に起因する音のトラブル」の存在を指摘しています。
騒音の9割は設計で解決できる?
こんにちは!廣田信子です。
新築マンションを購入したら、原因がよくわからない騒音に悩まされる…。で、訴えても、なかなか聞いてもらえないということがあります。
住宅リフォーム・紛争処理支援センターによると、共同住宅で紛争になった「不具合」は、外壁や床のクラックが一番多くて18.8%ですが、2番目は遮音不良で15.2%もあります。異常音というのも9.4%ありますから、紛争の1/4は、音のトラブルになっています。
で、音のトラブルの原因はどこにあったか…日本建築学会の資料によると、
- 床が51%
- 壁が15%
- 天井、屋根が11%
- 設備機器が11%
- 開口部、建具が6%
となっています。
専門家は、建物内の騒音は設計で9割が解決すると言います。実は、音の伝わり方や音の死角は、設計者、施工者が見逃しがちなところでもあるのです。生活の仕方の問題で片付けられている中にも、技術的な問題で遮音性能が低くなっていることが原因の場合もあるのです。
特に近年に建築され、それなりに騒音対策が取られているはずなのに、音が響く…、リフォーム後に音がひどくなった…、というような場合は、あきらめずに、具体的に伝えて、原因を探れば、解決できるものが多いということです。
音には、空気の振動で伝わる「空気伝承音」と、固体を通して伝わる「個体伝承音」があります。「空気伝承音」として問題になるケースとしては、外部の交通騒音、会話等が、給排気口を通して入ってくることがあります。給排気口の防音対策がとられていないのが原因です。
リフォ─ムで、アイランドキッチンに変えたために、外の騒音が、換気フードからリビングに入ってきてしまったという事例もあります。お隣の話し声等がバルコニーを回って伝わってくることもあります。最近は、壁等の防音性能が高まったために、相対的に開口部から入ってくる隣の話し声等も気にする人が増え、防音のための二重サッシ化が多くなっているといいます。
「個体伝承音」が問題になるケースとしては、屋上やルーフバルコニーのデッキの設置の仕方が悪くて、重量床衝撃音(歩行音等)が響いてしまう。住戸の床を二重床にして空気層を設け、遮音性を上げたはずが、床と壁が接する部分の処理を間違えているため、軽量床衝撃音(食器を落とす音など)が響いてしまう。二重天井にして、天井裏にグラスウールを敷き詰めて上の階の騒音が伝わりにくくなっているはずが、施工の仕方が悪い(床と天井がつながっている)ため、まったく効果がない。そんなことがあるのです。
また、建物内にポンプ室、ラック式駐輪場等がある場合、その機器の設置状況が悪くて、機器の振動が直接壁に伝わってしまうために、壁を伝わって、上階に音が響くということがあります。特に、駐輪ラックを後から設置した場合は気を付ける必要があります。壁や床を伝わってかなり広範囲に響くので、原因になかなか気づかないこともあります。
日経アーキティクチャ─(2019.3.14)で、建築上解決できる音の問題が特集されていて、参考になりました。特に、二重床、二重天井になっていても、施工の仕方が悪いと効果がないことがある…ということは、覚えておいてくださいね。
きちんとリフォームしたはずなのに、どんなに気をつけても、下の階から苦情がくる…というような場合は、施工者も気がつかない施工上の問題がないか、疑ってみる必要があるかもしれませんよ。
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