米中通商交渉
米中通商交渉でも米国は強気であり、中国がある程度折れると、次の要求を突き付けてくるので、中国は、米国との交渉に限界を感じ始めている。その上に交渉責任者の劉鶴副首相は中央政治局委員であり、党内順位は低い。
総書記(習近平)、政治局常務委員7名、その下の政治局委員18名の中で、劉鶴副首相は党内序列10位程度あり、政治的判断を単独では下せないために、上へ上申する必要があり、米国の一方的な要求を即断することができない。上申しても通らないために、時間だけが経っている。交渉開始から1年もたっているのに、数歩の譲歩をしただけである。
中国の外交専門家の地位が低いので、外交交渉が難しい。交渉現場に首相や国家主席が出ないし、首相や国家主席が甘い妥協をして決めてきたことでも、交渉現場担当者が条件を付けて、潰すことも多々あり、中国との交渉はどの国でも、うまくいかない。多くの国で約束した工事が開始もしない。
このため、とうとう、欧州でも東南アジア諸国でも中国との関係を見直し始めたのである。このため、米国も中国との交渉では、相当に厳しい条件を付けて、逃げられないようにする必要がある。
よって、米中通商交渉は、一歩一歩しか進展しないが、株価が心配で今まで、トランプ大統領はうまくいっているとリップサービスをして交渉継続をしてきている。しかし、ここに来て相場が楽観的になり、中国との合意がまだまだと米中首脳会談の日程も提示しなくなっている。合意は、まだ遠いことを示している。
中国も減税や金融緩和により、景気は持ち直しているし、輸出数量の落ち込みが少なくなってきた。輸入が少なくなり、貿易黒字は、むしろ増加している。しかし、本格的な景気回復ではない。習近平国家主席は欧州への輸出拡大を狙い、フランスやイタリアに行き、李克強首相も欧州に行っている。輸出を米国から欧州に向けている。
部品などの技術を持つ日本や欧州の会社を買収して、生産を中国に移して輸入を減らした効果が出ているので、米国との通商合意を急ぐ必要がない。中国は米国なしでもやっていける体制を構築し始めている。
この面からも米中通商交渉は、転換点に来ていると思える。米国の経済覇権が揺らぐことになる。ドル為替SWIFTシステムなしでも送金できるブロックチェイン技術のシステムを中国は構築しているし、経済力でも米国を上回る可能性が高まっている。世界的にその国の一番の貿易相手国は、中国になっている。
しかし、米中両国は、通商交渉決裂にもできない。中国は米国への輸出が大きいので、これ以上の関税UPは避けたいし、米国は世界経済縮小で米国製造企業の輸出に影響があり、また株価を維持からも交渉継続するしかない。
日米通商交渉と日本株
米国は、2020年の大統領選挙で目に見える成果が必要になり、交渉上、一番容易な日本との交渉を先にして、成果を上げようとし始めている。円高にシフトさせて、米国内に工場を建てさせ、農産品を買わせて、貿易赤字をなくせと要求してくる。
しかし、米中通商交渉を続けながらの日本との交渉になり、日米交渉は進まない可能性大であり、とりあえず、農業産品の日本の輸入関税引下げだけを個別に審議することになる。農務省が前面に出て、USTRは側面となるはず。
4月15日から始まるので注意が必要であるが、今の米国投資家は、実際に悪い結果が出ないと反応しないようであり、そのような予測があっても関係ないようで、積極的に日本株を買いあさっている。
特にソフトバンクGなどは、借金して投資をする両建て経営で大きくなってきたが、リスクオフの総楽観相場では、評価が高くなる。このため、大幅な株価上昇になっている。
どちらにしても、安倍首相のトランプ大統領への接待外交で、日本への要求を下げてもらうしかない。米国から石油や安いLNGを輸入して、カタールからの高いLNGを止めることである。中東からの石油も止めることで米国への貿易黒字は無くなる。