仕事を早く終わらせて定時で帰る社員を「怠け者」とする考え方が浸透してしまっている日本。しかし、そんな思考がこの国の「現在と未来」を暗いものにしているのかもしれません。今回の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では著者で国際ジャーナリストの北野幸伯さんが、「長時間労働」を諸悪の根源と断言した上で、令和を良い時代にするために国民が心がけるべきことを記しています。
令和日本は、よくなっていく予感がしました
先日、取引のある会社の方と会いました。モスクワにずっといた私は、「日本の労働形態」にとても関心があります。それで、可能な限り「どんな風に仕事をしているか?」をたずねることにしています。Hさんはいいました。
「基本的に、出社するしないは、本人に任されています」
私は驚いて、「え”!てことは、ずっと家にいてもいいってことですか?」と聞き返します。
Hさん 「はい。家で仕事をしても大丈夫です」
Hさん自身は、どんな感じなのでしょうか?
「自分は、一応毎日出社しています。出社はだいたい午後1時ぐらいですね」
北野 「午後1時ぃぃ!?!?!?で、会社にいったら、何するんですか?」
H 「まず、飯食って、それから【昼寝】します」
北野 「【昼寝】?????会社で【昼寝】してもいいんですか?!!!」
H 「はい。【社長】も【昼寝】してますし」
北野 「……で、何時まで仕事されるのですか?」
H 「だいたい(午後)7時ぐらいですね」
北野「……超幸せな会社ですね~」
H 「そうですね。たぶん社長が合理的な人なんだと思います」
北野 「………」
短時間労働でたくさん稼いだら悪????
私は、「ホントにすごい!」と思いました。何がすごいって、Hさんが働いている会社は、名の知れた超高収益、超優良企業。しかも、日本国をよくするコンテンツを数多く配信して、お国のためにバリバリ貢献しているのです。
「……それにしても、怠けすぎではないか?午後1時に出社して午後7時に退社だったら、6時間しか働いていないじゃないか?しかも、飯食って昼寝してたら、実働時間は4時間半ぐらいなのでは??」
と思う人も多いでしょう。別にそれでもいいですよね?要は、世の中の役にたって、同時に利益がでればそれでいい。ぶっちゃけ、8時間働いて1万円稼ぐより、1時間で1万円稼ぐ方がいい。いえ、10分で1万円稼ぐほうがいい。
ところが日本では、8時間働いて1万円稼ぐのは【尊い】とされるのに、10分で1万円稼ぐのは【尊くない】とされてしまうのです。仕事をちゃっちゃと終わらせて定時にかえる社員は、「有能」とは見なされず、「怠け者」と見られてしまう。
こういうバカげたメンタリティーが、日本経済停滞の原因です。【ダラダラ長時間労働】の方が【尊い】とされるのですから。
だから日本の労働生産性は低い
結果、日本の労働生産性は、G7中【最下位】なのです。公益財団法人 日本生産性本部が2017年12月20日に発表した、「労働生産性の国際比較2017年版」に記されています。
日本の時間当たり労働生産性は46.0ドルで、OECD加盟35ヵ国中20位。OECDデータに基づく2016年の日本の時間当たり労働生産性(就業1時間当たり付加価値)は、46.0ドル(4,694円/購買力平価(PPP)換算)。米国の3分の2の水準にあたり、順位はOECD 加盟35カ国中20位だった。名目ベースでみると、前年度から1.2%上昇したものの、順位に変動はなかった。主要先進7カ国でみると、データが取得可能な1970年以降、最下位の状況が続いている。
皆さん、ご存知でしたか?
長時間労働が諸悪の根源
国民が世界一勤勉で善良な日本国。しかし、さまざまな問題を抱えています。たとえば、
- 少子化問題
- 未婚化、晩婚化
- 過労死、過労自殺
- 増えつづける児童虐待
- 増えつづける子供の生活習慣病(だから「成人病」とよばない
- 孤独死
などなど。これらは「全部そう」とはいいませんが、「長時間労働」が原因なのではないでしょうか?朝7時に家を出て、帰宅するのは10時、11時。こんな人は、山ほどいることでしょう
- 少子化問題(長時間労働で、子供をつくる余裕がない)
- 未婚化、晩婚化(長時間労働で、相手を見つける余裕がない)
- 過労死、過労自殺(これは、まさに長時間労働のせい)
- 増えつづける児童虐待(忙しくて心に余裕がなく、かわいいはずの子供がうざったく感じる)
- 増えつづける子供の生活習慣病(お母さんが忙しすぎて、まともな食事をつくる余裕がない)
- 孤独死(忙しすぎて、年取った両親の面倒を見る余裕がない)
ところで、午後1時に出社するHさんは30歳で結婚しています。同じ会社のKさん(男性)は、25歳ですでに結婚していました。時間とお金に余裕があれば、「彼女欲しいな」「彼氏欲しいな」となる人が多いのでは?それって、「本能」ですよね。
怒られるかもしれませんが、人生は「仕事だけ」ではありません。おじいちゃん、おばあちゃんがいる。お父さん、お母さんもいる。兄弟姉妹がいる。結婚すれば、奥さん、ダンナさんもいる。子供が産まれれば、子育てもある。彼らは皆、「大切するに値する存在」です。
しかし、「死んだ会社教」にしがみつく会社は、社員に、家族を大切にする時間的余裕を与えないのです。それで私は、「真の働き方改革」「家族大切主義」などを主張しています。
Hさんとは違う会社のIさんがいいました。
「私が出社するのは、原則週に1度だけです。私のような働き方は、まだ主流ではないですが、取り入れる会社も増えていますよ。10年後には主流になるはずです!」
令和は、「良い時代」になる!
「令和」の時代が近づいています。令和は、皆が時間的にも金銭的にも余裕ができて、孤独死も児童虐待もいじめもなくなる、良き時代になるでしょう。
「……北野さん、そんなこと言っちゃって大丈夫ですか?皆、『日本はもうダメだ!』といってますよ!」
と突っ込みが入りそうです。しかし、皆さんに知っておいてほしいと思います。「良い時代」も「悪い時代」も「私の心からはじまる」のです。違いますか?
考えてみてください、「結婚」も「離婚」もまず「心の中」で起こるのではないですか?だから、「令和は良い時代になるよな~」と思うことが大事なのです。
次に「令和を良い時代にしよう」と考える。そこからすべてがはじまります。
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