令和初の国賓として訪日したアメリカのトランプ大統領。スカイツリーも米国旗仕様にライトアップされるなど、国をあげての歓迎ムードに包まれ、大統領もゴルフや相撲観戦などを楽しんだ様子でした。が、果たして、トランプ氏にとって日本はどのような位置づけなのでしょうか。無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』で著者の国際関係ジャーナリスト・北野幸伯さんがわかりやすく解説しています。
トランプ訪日でわかること
トランプさん、日本に来られましたね。26日は、ゴルフをし、相撲も観戦して、楽しかったようです。
両首脳は千葉県茂原市の「茂原カントリー倶楽部」でゴルフを楽しみ、その前後には朝食と昼食をともにした。首相はゴルフ場に向かう前、首相官邸で「新しい令和の時代も日米同盟をさらに揺るぎのないものとしていきたい」と記者団に語った。
(産経新聞 5月26日)
ゴルフを楽しまれたのですね。そして、
安倍晋三首相は26日、令和初の国賓として来日中のトランプ米大統領と東京・両国国技館で大相撲夏場所千秋楽を観戦した。外務省によると、現職の米大統領が大相撲の本場所を観戦するのは初めて。トランプ氏は、新たに創設した「米国大統領杯」を幕内優勝した朝乃山に贈呈した。
(同上)
「相撲観戦って、アメリカ人でも楽しいのかな???」と思いましたが、上機嫌だったみたいです。この後は、
さらに首相は26日夜、昭恵夫人とともに、東京・六本木の炉端料理店でトランプ氏夫妻をもてなした。首相は同店で記者団に「令和時代の初めての国賓としてトランプ氏とメラニア夫人に来日していただき大変うれしく思う。リラックスしながらさまざまなことについて議論を行いたい」と述べた。
(同上)
なんというか、「充実した一日」です。トランプさんは、どんな感想だったのでしょうか?
トランプ氏は、首相と貿易や安全保障問題を議論したことを明らかにし「とても実り多い日だった。明日も実りの多い日となるだろう」と述べた。さらに「相撲をずっと見たかった。本当にすばらしかった」と述べ、笑顔をみせた。
(同上)
楽しかったようです。
トランプさんにとっての日本
トランプさんにとって、安倍さんの日本とはなんでしょうか?「唯一トラブルがない同盟国」といえるでしょう。どういうことでしょうか?
トランプさんは、欧州のNATO加盟国ともめています。彼は、「NATO加盟国は、もっと軍事費を出せ!」と要求している。「軍事費をGDP比2%まで引き上げる」というコンセンサスはできている。しかし、トランプさんは、「GDP比4%まで上げろ!」と発言。ドイツをはじめとする欧州諸国は、反発。米欧関係が、悪化しています。
中東の同盟国イスラエルは、どうでしょうか?トランプさんは、ネタニヤフ首相の親友。それで、イラン核合意から離脱した。それが理由で、「イラン核合意」を支持する、イギリス、フランス、ドイツ、ロシア、中国、イランとの関係が悪化。最近は、アメリカから厳しい制裁を科されたイランが、核合意の内容を守らなくなってきた。それで、「戦争か?」といった話も聞こえてきます。
東アジアの同盟国韓国はどうでしょうか?皆さんご存知のように、文さんは、中国、ロシア、北朝鮮の手先となり、「段階的非核化」「いますぐ制裁一部解除」を主張している。アメリカから見ると、「裏切り者」ですね。
こう考えると、日本とアメリカは、唯一穏やかな関係といえるでしょう。トランプさん、だいたいどこにいっても大規模な「反トランプデモ」が起こります。しかし、日本では大歓迎され、大好きなゴルフもできる。彼は、アメリカでもリラックスできないのですから、日本は「世界で唯一安心できる場所」といえるのではないでしょうか?
そして、米中覇権戦争がはじまった今、日本の重要性はますます高まっているのです。
安倍総理は、トランプの「ポチ」ではない
総理大臣は大変です。トランプさんの機嫌が悪ければ、「アメリカ大統領の機嫌を損ねた」と批判される。トランプの機嫌がよければ、「アメリカにすり寄る安倍は、トランプのポチだ!」と批判される。機嫌を損ねても、喜ばせても、どっちにしても批判される。
とはいえ、「安倍はトランプのポチだ!」というのは、まったく事実ではありません。証拠もあります。
- トランプはTPPに反対、安倍さんは賛成
- トランプはイラン核合意離脱、安倍さんは合意支持
- トランプはパリ協定離脱、安倍さんは協定支持
- トランプは自由貿易反対、安倍さんは自由貿易支持
- トランプは「エルサレムはイスラエルの首都」と主張、安倍さんは、これに反対
というわけで、二人の意見は、重要問題でことごとく対立しています。これで「ポチ」という人は、いったい何をもってそういうのでしょうか?まさか、「一緒にゴルフをしたから」とかいわないでしょうね????
日本にとってのトランプ・アメリカ
さて、「全世界と対立している」といっても過言ではないトランプさん。まことに難しい相手です。それでも、アメリカは日本の同盟国。対中国で、絶対必要な存在。なんといっても、中国は、「日本には、尖閣だけでなく、【沖縄】の領有権もない!」と宣言している。全国民必読証拠は、こちら。
日本一国では、核を持つ強大な敵に勝てない。だから、アメリカとの強固な同盟関係が、絶対不可欠。それに、北朝鮮問題、拉致問題も、アメリカの助けなしに解決しません。むこうは、核をもっているのですから。
こう考えると、安倍総理は、見事に国益を守っておられる(中国接近は、かなり気になりますが…)。米中覇権戦争の混迷期に、安倍さんが総理であること、日本はラッキーです。
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