【書評】人口減少は危険?国民の危機感を煽って得するのは誰か

 

どこどこの地方で人口増があるといった話題はほとんどまやかしだ。その成功事例が東京でも同じ効果を期待できるわけがない。政府は「人口減少は大きな問題ではない」と考えている。そもそも子育て支援やコストなど金銭面から少子化を論じたところで、頓珍漢な議論にしかならない。政府は「働き方改革」「子育て安心プラン」などで、出生率低下に歯止めをかけようとしている。

だがそれは(人口減少を不安視している)国民の要望に応えるという、政治的な意味で取り組んでいるに過ぎない。性行為の結果である出生を、政府がコントロールできるわけがない。子供を産ませる政策と、生後の子育て政策はまったく別物である。出生率を増やすのに最も効果的と考えられているのは、人工妊娠中絶の禁止・抑制であるが、日本では決してそんな政策はとらない。

政府は一応「出生率1.8」を掲げてはいるが本気ではないし、その必要もない。国民の幸せ=人口の増加ではない。実は人口減少危機論はたいした話ではないし、それ自体が何となく雰囲気で書かれているではないか。この本では、人口減少は大騒ぎするほどの問題ではない、という見方が正しいことを逆説的に検証する。

「まあ人口は減るだろうが、出生率もこれからほとんど横ばいだろうから、社会保障制度の設計に支障は何もない」というのが著者の答えだ。移民政策などによって無理やり人口を増やす必要もない。政府が移民受け入れに本腰を入れた、などと煽る人も増えてきたが、移民が願わしいと思った人がそう叫んでいるに過ぎない。安倍首相も移民は望ましいものではないと考えているはずだ。

人口減少は日本社会に危機をもたらさない。人口減少が経済に与える影響と、年金制度に与える影響はたいしたことはない。地方分権さえ進めれば各地方自治体も創意工夫で強くなり、生き残っていける。財務省やマスコミによる、日本財政は危機であるとのしつこい宣伝を信じてはいけない。ところで、「しょうしか」と入れると「笑止か」が出るわたしのMacはふざけた奴だ。皮肉を好む主人に迎合している。

編集長 柴田忠男

image by: Shutterstock.com

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