「OK牧場!」のギャグで親しまれた、元WBC世界ライト級王者のガッツ石松さんが、6月2日に逝去されました。リングの上の壮絶な人生とは裏腹に、礼儀正しく誠実で、自然なユーモアをたたえた人柄。そして、初対面で大橋巨泉さんにきっぱりとダメ出しをした、一本気な美学。メルマガ『富田隆のお気楽心理学』では、著者で心理学者の富田隆さんが、生前のガッツさんとの交流を振り返りながら、彼が「猫」から学んだ知恵と、心理学者が思い描く穏やかな旅立ちの風景を綴ります。
さようなら、ガッツ石松さん
プロボクサーでWBC世界ライト級チャンピオンの「ガッツ石松」さんが、この6月2日に肺炎で逝去されました。
5月中は、お元気にお仕事をされていたとのことですから、急な旅立ちだったようです。
初めてガッツさんにお会いしたのは、今から30年以上も前のことでした。
お互い、テレビなどの露出が多かった頃で、子供たちも「OK牧場!」のギャグを知っていましたが、番組でご一緒することはありませんでした。
初対面は友人のパーティーの席です。
壮絶な人生を生き抜いて来たにも拘わらず、彼は礼儀正しく誠実で、それでいて自然なユーモア感覚があり、こちらが虚心坦懐になりさえすれば、すぐに打ち解けることができるタイプの人でした。
それでも彼は、上から目線でマウントを取ろうとするような人や、妙に馴れ馴れしい態度でいきなり肩を組もうとするような相手は嫌っていたようです。
かつて大橋巨泉さんが、ほとんど初対面の彼に対して「ガッツ」と呼び捨てにした時、彼は巨泉さんに対して、「俺はあんたに『ガッツ』と呼ばれるような筋合いは無い」とダメ出しをしたという伝説が残っています。
一本気な人ですから、自分自身が他者への礼節を大切にしている分だけ、周囲にも最低限の礼儀を求めたのでしょう。
「猫」から学んだ日向ぼっこ
何度目にお会いした時だったかは定かではありませんが、二人で立ち話をしている内に「猫」の話になったことがありました。
ガッツさんは「猫」から多くのことを学んだというのです。
しばしば猫は、気持ち良さそうに「日向(ひなた)ぼっこ」をしています。
どうやら、体調があまり良くない時に、敢えて猫は「日向ぼっこ」をして、身体に太陽光線を吸収し、温めることで、体調を良くしてしまうようだ、とガッツさんは気付いたのです。
それ以来、ガッツさんは、体調が良くない時には猫の真似をして「日向ぼっこ」をするようになったのだそうです。
それが結構良く効くということで、「風邪くらい、簡単に治ってしまいますよ」と笑いながら話してくれました。
穏やかな「あの世」を想って
私は今、天国でのんびり日向ぼっこをしながらくつろいでいるガッツさんを想像しています。
その天国は、雲だらけの真っ白な世界でも、洋風のハイカラな場所でもありません。
そこはガッツさんが育った古き良き日本の農村なのです。
陽当たりの良い、藁葺(わらぶき)屋根の農家の縁側に、ガッツさんはゆったり身を横たえています。
軒には橙色の干し柿が吊るされていて、遠くには雪を戴く連山が見え、どこからともなく、誰かが歌う「馬子唄」と尺八の音が聞こえて来ます。
ガッツさんは、次に生まれ変わるまで、この天国(と言うより「あの世」「彼岸」)で、親しい故人に囲まれ、しばしの休息を楽しむはずです。
ガッツ石松さんのご冥福を、心よりお祈り申し上げます。
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