元農水事務次官に息子殺害を選択させた「日本の世間」の恐ろしさ

 

そこから先は、様々な意見や立場性の取りようがあるのでしょうが、1つお話ししておきたいのは、アメリカの場合は、比較的多くの家族が「世間よりも家族を大事にする傾向があるということです。

例えば、子供が殺人を犯したとします。日本の場合は、親子の縁を切り、それでも止まらない世間の非難を避けて、親は行方知れずになるというケースが多いといいます。それ故に、死刑囚の遺体の引き取りがされないという話もよく聞きます。

アメリカの場合は、大雑把な傾向として相当に違います。殺人を犯した子供について、親は堂々と擁護することが期待されます。勿論、アメリカでも被害者に正義を託す世論は強大で、それこそ強力な「世間が親子を攻撃するのは変わりません

ですが、それでも多くの親が子供に対して「社会全体が敵視しても、自分だけは理解者として子供を守る」とか、「なんとか死刑を逃れるように、恩赦を獲得するためにギリギリまで奔走する」というのが普通とされます。場合によっては、執行に立ち会うこともありますし、死刑囚であってもキチンと葬儀を行って葬送するし、自分の家族の墓に入れることもあります。

別にアメリカが立派だというのではありません。また、キリスト教のカルチャーがあえてそうさせている(多少はそうですが絶対的な理由ではないと思います)のでもないと思います。

そうではなくて、最後には子供を殺めても構わないという、そこまで強大な日本の世間というのは何であるのか、改めて考えさせられた、そんな思いがするのです。

image by: MAG2 NEWS(東京・練馬区の事件現場付近)

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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