MAG2 NEWS MENU

現役30年のアナウンサーが伝授。5G時代の「寄って見せる」話し方

人前で話すあらゆるシーンに役立つプロの技を伝えてくれるメルマガ『話し方を磨く刺激的なひと言』の著者で、アナウンサー歴30年の熊谷章洋さん。今回も前回に引き続き、来たる5G時代に求められる「映像などを見せながら話すコツ」を伝えています。見ている人が感じそうな疑問に答える話し方や、聞き手の集中を誘う話し方など、スライドなどを使ったプレゼンでも使えるコツを惜しみなく披露しています。

見せたいところをクローズアップする話し方

「見せながら話すコツ」について、解説しています。プレゼンなど、聴衆の面前で話をするときはもちろんのこと、今後は、一般の人でも、テレビレポーターのように、カメラの前で、動画で伝える場面も増えてくると思います。

話し手も聞き手も、同じものを見ながら話をすすめる時、当然ながら、使う言葉も話し方も違ってきて然るべきです。なにしろ、見ればわかってしまう情報を目の前にしているわけですからね。

例えば、テレビのスポーツニュース。以前、どなたかが、スポーツニュースの原稿が文法的に間違っている、と指摘する記事を見かけたことがあります。いや、書き言葉の文法とは、違っていて当たり前なんです。

特にテレビのスポーツニュースの場合は、映像を見て話が成立するように、つまり、見せながら話すときの話し言葉に、かなり寄せているからなんですよね。言い方を変えると、絵が主、言葉が従の状態であるということです。一度、その点に留意しながら、スポーツニュースをご覧になってみるといいと思いますよ。

そして前回の記事では、見えていることを始点=主にして話すことで、これまで必要だった客観情報の説明は、従=補足的な要素となり、その代わりに、主観、情緒的表現を中心に話を深めることが、大事になってくる、とお伝えしました。

これまでの時代の話し上手は、客観情報の説明で聞き手に上手にイメージさせて、まるで目に浮かぶかのような状態を形成しつつ、そのうえで主観的情緒的な表現を駆使してきました。

もちろん、そういう話し方は、これからも映像のない状態では有効ですが、映像込みでの話の場合、イメージ醸成のための客観情報が蛇足になりうる、つまり、ちょっとくどい話し方になってしまうんですね。

街で道を尋ねられたら、「あっち」と指さすのが一番手っ取り早い説明であるのと同様に、見えているものに、あれこれ言葉を付け足されるのは、聞く側も、若干、我慢を強いられますよね。

そういった、見せながら話す状態で求められることとして、

前回、この2点を挙げました。
今回は、「見えていることから感じる疑問に答えること」について、解説していきます。

ものが見える、ということは、そこからさまざまな情報を得て、何かを感じる、ということです。その感じ方、感じる度合いは、人それぞれ、状況や能力の違いもあると思います。

いずれにせよ、見せながら話す側としては、聞き手が見て感じた疑問に答えること、あるいは、聞き手が感じそうな疑問を先回りして説明することが必要になります。

具体的には、デザインや配色が奇抜、形状が変わっている、不自然、見慣れないものがくっついている…など、見た目が明らかに、一般的な傾向と違ったり、そもそもどういうものなのか、見ただけではわからなかったりする場合、そこには、何か意味があるんじゃないか?それこそが、そのものの本質、存在意義なのではないか?と普通の人なら思いますよね。

それが、聞き手が、見えていることから感じた疑問です。それに対する答えがなければ、とても不親切ですし、話として成立していませんよね。

よく、どう考えてもおかしな格好の人物に対して、誰もそれを指摘することなく、普通にスルーし続けるようなコント、ありますよね。見た目の疑問に答えない、というのは、まさにあのような、お笑いのネタにもなりえるぐらいの状態なのです。

ですから話し手としては、そういった見た人が感じるであろう疑問を、できる限り話し漏らさぬようにしなくてはいけません。これは、相手が聞きたい話を察知するという、これまでも再三お伝えしてきた心構えと共通するところでもありますね。

このような、見た目の疑問に答える話し方を、簡単な「導入の言葉」で言い表すならば、「なぜこうなっているかというと…」のような表現になるかと思います。ものを見せながら話すときには、「なぜこうなっているかというと…」というような精神を持つことが必須でしょう。
また、見る人が疑問に感じるから答える、というような受動的な在り方だけではなく、そういう疑問を、話し手から提示するような、話の作り方も可能です。
これが、前回の記事でお伝えした、「何か言いたいことがある場合、それを、見た目と繋げた表現に変換していくこと」です。

例えば、ある新製品の新機能を紹介するシーンで、その新機能を司っている部位があり、その部位のデザインに新しい工夫があるとします。

ラジオのような音声だけの発表や、紙媒体での紹介であれば、「新製品の第一の特徴は、これこれこういう新機能が搭載されたことです。この新機能にどれほどのインパクトがあるかといいますと、今まで、〇〇するしかなかったことが、××だけで可能になるんです!」

などというような説明が先に立つところ、見せながら話すのであれば、「まずこの部分をご覧いただけますでしょうか?新製品ではこのような、ちょっと見慣れないデザインが追加されました。なぜこの部分がこうなっているかというと、これによって、こうすることが可能となって、その新機能が実現できた、というわけなんです…」

というように、言いたいこと=新機能についての説明を、なぜこのデザインか?という疑問に答える形に変換して、話すことができるわけですね。

また、人によって情報の受け取り方は様々だと先述しましたが、こちらが話をしたいその疑問を、一見しただけでは感じなかった人もいるものです。そういう人に対しても、こういう「ものの見方」があるんだということを、提示してあげることも必要になります。

そんな時にも、「ここがこうなっているのは、ちょっと変わってるな、って、思いますよね?」とか、「…思った方も多いですよね?」「…と思った方は、かなり鋭いですよ」などの言い回しで、話し手から疑問を提示して、自分の言いたい話に繋げるようなやり方も、多くの場面で使えると思います。

このような、見せながら、聞き手に何かを感じさせる時に最も大事なのは、きちんと視線を集める、ということです。言葉を換えれば、「見せたいところをクローズアップする話し方」です。

どういうことかというと、感覚的には、テレビの情報番組などで、「カメラさん、ちょっとここ、寄ってもらえます?」などとレポーターが言うのをきっかけにして、カメラの映像が、ググっと、その見せたい部位を大写しにするようなシーン。あのようなイメージで、聞き手の注目を集める工夫です。

表現としては単純に、「ここをご覧ください。」でも良いのですが、それに加えて、「ここがこうなっているのが、わかりますよね?」というように、より詳細な描写をすることで、聞き手の視線が、そのものの細部に達し、結果、聞き手の集中力が高まるわけです。

注目は大雑把にさせるのではなく、もう一段階、微細なところまで、寄って見せることが、コツになります。そしてそこで、「こうなっているのが、わかりますよね?」と問いかけられたら、何と答えますか?「ああ~確かに、そうなってますね」と答えますよね。
こういうやり取りが、徐々に、共感につながっていくわけです。自分の話が共感されることに否定的な人は、滅多にいないと思います。

image by: Shutterstock.com

熊谷章洋この著者の記事一覧

アナウンサー歴30年、極限の環境で話し続ける著者が、実体験から会得した「話し方のコツ」を理論化。人前で話す必要がある人の「もっと〇〇したい」に、お答えしています。一般的な「話し方本」には無い情報満載。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料で読んでみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 話し方を磨く刺激的なひと言 』

【著者】 熊谷章洋 【月額】 ¥346/月(税込) 初月無料! 【発行周期】 毎週 月曜日(祝祭日・年末年始を除く) 発行予定

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け