なぜ「笑いが起こるプレゼン」ほど中身が人の頭に残るのか?

 

澤流テクニックその1

ボクがよく使うのが「極端にオーバーな表現を使う」というテクニックです。前述の例であれば「操作性がアップした」ことをオーバーに表現します。「この便利さには全米が震撼レベルです」とか「この操作性は世界中の人が喜んで、ノーベル平和賞を与えてくれるかもしれません」とか。

別に大笑いは必要ないのです。ちょっとズレた表現をさしはさむだけで十分に緩和の効果が期待できます。

もちろん、この文章単体だと「えー、それ言うの勇気がいるんですけど…」という方もおられるでしょう。当然、このようなちょっとズレた表現は「流れの中でさらりと使うのがコツです。そのために、挨拶の段階である程度緩和の瞬間を作っておいた方がいいですね。

ボクが最初の挨拶でちょっと笑いを取るようなフレーズを入れているのも、このようなズレた表現が差し込みやすくなるからです。「この人はクソ真面目にプレゼンをするわけではないな」という印象さえ与えておけば、ちょっとしたズレた表現は相手も受け取りやすくなります。

澤流テクニックその2

もう一つボクがよく使うテクニックが「架空の人同士の会話を入れる」という方法です。

これは、落語を思い出していただけるとわかりやすいと思います。落語なんかですと、将軍様から下町の承認、あるいは農民の人々など、たくさんの登場人物が現れ、すべてを一人の噺家が演じてしまいます。そのような、ちょっとした寸劇をクイックに入れるわけです。

製品の説明をしている最中に、ユーザーアンケートの結果を紹介するとしましょう。「このアンケートには10代後半から20代前半までの女性が回答してくださって、非常にいい評価を受けています」という内容をプレゼン中に伝えるとしましょう。

「この製品を女子高生の方に試していただいたところ、『マジでこの機能使いやすいんだけど~~!やばい~~!』と、大変ポジティブな反応をいただきました」と、女子高生のセリフの部分だけ声のトーンもちょっと上げ気味にして、ちょっと女子高生っぽく話すと、メリハリがつきます。

これも、あまり必死になって笑わせようとしなくてOKです。スパイスのような形で挟み込めば十分です。

ボクがよく使うテクニックは「歴史上の人たちを今風に登場させる」というやり方です。「織田信長さんはどうやって多くの兵士を動かしたのか」という話をするとき、信長さんの語り口を妙に軽くしてみたりします。

おそらく、織田信長は近い家臣に鉄砲を使った戦術に関する説明などを行い、合戦に臨んだのではないかと思います。普通なら「おそらく織田信長は、伝来したばかりの鉄砲を合戦で使おうと思いつき、家臣にその指示をしたと思われます」なんていうのが普通の説明になりますね。織田信長が誰かに説明をしているシーンを、ちょっとコミカルに演じてみるわけです。

「俺さぁ、武田さんに喧嘩売っちゃおうかと思ってるんだよね~。で、鉄砲とか使って晩バーンとか撃っちゃって、誰もやったことないイノベーティブなやり方で合戦とかしちゃおうと思ってるわけ。どぉ思う?」なんて話し方を、プレゼンの最中に挟み込みます。

こんな話し方をしていたとは到底思えませんし、イノベーティブとか言ってるわけがありません。ただ、このように笑いを呼ぶような説明をすることで、やわらかい雰囲気でありつつもボクが伝えたいことは表現できています。「織田信長は家臣に対して自分の新しいやり方を説明していた、それがきっかけで世の中が変化した」というストーリーを伝えるのに、あえて柔らかい表現を使うのです。

こういう「ズレ」は人々の意識の緩和を呼びます。そうすることで、本当に伝えたいことを受け取りやすくするのが、プレゼンにおける笑いの役割です。

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