2番目は、取引先の問題です。こういう種類の製造業の場合、取引先というのは問屋さんだったり、小売店だったり、またプロジェクトの場合は、官庁だったり、教育機関だったりするわけです。そうした相手から「男性育休取れるなんて、贅沢だ」とか「さすが大企業。もっと値引きしてよ」的な「カネを出す側の地位を利用したパタハラ」が飛んでくる可能性は十分にあります。
そうした場合に、「お客様は神様」という経営思想をバカ正直に守っている中では、「育休を長く取るような男性は直接前線には出せない」という話になります。多分、こうした問題になると、一社の状況を超えた業界とか地方のカルチャーの問題になるかもしれません。
ですが、そんなことをやっていたら、ドンドン日本の人口は減って国が消滅してしまうのです。パタハラをやるような取引先は神様ではない、というぐらいの覚悟で、従業員を守る、あるいは徹底して相手に理解を求める必要があります。
そのコストは重いかもしれません。ですが、払わなければ結局は優秀な人材は逃げるだけです。そして企業イメージに傷がつけば、ブランドが毀損されてゲームオーバーになってしまうのです。危機感が足りなすぎます。
3番目は、つまりは経営トップの問題です。アシックスというのは、北米では大変に人気があります。そのブランド価値は、相当なレベルになっていると思います。その価値を守っていくためにも、こうした「人に関する思想」という問題で、マイナスイメージを作るのは禁忌です。人事制度の総見直しを行い、取引先にも理解を求める中でパタハラを根絶する、これは待った無しの危機管理だと思います。
とにかく、今回のアシックスの場合は、カネカのようなB2B企業ではありません。国際的に認知されたブランド、しかもスポーツ用品というデザインと機能を備えたメジャーなB2Cブランドです。行動するのは今です。猶予はないと思います。
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