カネカの次はアシックスが大炎上。日本企業がパタハラ地獄な理由

 

2番目は、取引先の問題です。こういう種類の製造業の場合、取引先というのは問屋さんだったり、小売店だったり、またプロジェクトの場合は、官庁だったり、教育機関だったりするわけです。そうした相手から「男性育休取れるなんて、贅沢だ」とか「さすが大企業。もっと値引きしてよ」的な「カネを出す側の地位を利用したパタハラ」が飛んでくる可能性は十分にあります。

そうした場合に、「お客様は神様」という経営思想をバカ正直に守っている中では、「育休を長く取るような男性は直接前線には出せない」という話になります。多分、こうした問題になると、一社の状況を超えた業界とか地方のカルチャーの問題になるかもしれません。

ですが、そんなことをやっていたら、ドンドン日本の人口は減って国が消滅してしまうのです。パタハラをやるような取引先は神様ではない、というぐらいの覚悟で、従業員を守るあるいは徹底して相手に理解を求める必要があります。

そのコストは重いかもしれません。ですが、払わなければ結局は優秀な人材は逃げるだけです。そして企業イメージに傷がつけば、ブランドが毀損されてゲームオーバーになってしまうのです。危機感が足りなすぎます

3番目は、つまりは経営トップの問題です。アシックスというのは、北米では大変に人気があります。そのブランド価値は、相当なレベルになっていると思います。その価値を守っていくためにも、こうした「人に関する思想という問題でマイナスイメージを作るのは禁忌です。人事制度の総見直しを行い、取引先にも理解を求める中でパタハラを根絶する、これは待った無しの危機管理だと思います。

とにかく、今回のアシックスの場合は、カネカのようなB2B企業ではありません。国際的に認知されたブランド、しかもスポーツ用品というデザインと機能を備えたメジャーなB2Cブランドです。行動するのは今です。猶予はないと思います。

image by: natthi phaocharoen / Shutterstock.com

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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